十二月

写真

 12月に入ると、ムンも、おばあさんが編んでくれたおとな猫サイズのセーターを着られるようになりました。

 犬のマレよりずっと寒がりのムンも、暖かなセーターを着せてもらって、うれしそうです。まだ、だいぶ大きくてダブダブしていますが、それが却って可愛く見える駅員さんは、すっかり親馬鹿なのでした。

 

 体は大きくなっても、まだまだ甘ったれのムンは、夜はいつもマレにくっついて寝ていました。

 ムンはマレを犬のおにいちゃんというより、おかあさん猫だと思っているようです。もっとも、マレはマレで、ムンが猫ではなく仔犬の妹だと思っている節がありました。




 12月の日曜日の早朝。

 突然ポストさんが宿舎にやってきました。12月の日の出は遅く、外はまだほんのり明るい程度です。


 ポストさんが怖いムンは逃げ遅れて、駅員さんにしがみついて隠れたつもりでいます。犬のマレだけが大喜びでした。

「配達にしては、早すぎないか」

「今日は日曜。わたしは休みだ」

「しかし、わたしはこれから仕事だ」

「だから、出勤前に間に合うように、早起きしてきたんだ」

「何しに?」

 ポストさんは得意げにカメラを見せました。ポストさんはカメラや写真が大好きで、本当はカメラマンになりたかったのです。「写真を撮りに」

「なんの?」

「ポートレート。家族の記念写真だ」


 ポストさんは親切にも(親切かどうかはわかりませんが)、駅員さんとマレとムンの写真を撮りにきてくれたのです。駅員さんも、おそろいの赤いセーターを着たマレとムンのポートレートが欲しいと考えていたので、良い機会でした。駅員さんはマレとムンだけの兄妹写真のつもりでいましたが、ポストさんがそれを許してはくれませんでした。

「駅員さんもいっしょに撮らなにゃ」

「マレとムンだけでいいよ」

「家族のポートレートに、とうちゃんが写っていなくてどうする」

「と、とうちゃんて……」


 駅員さんは最後まで渋っていましたが、怖がりのムンは抱っこしていないと逃げるので、結局みんなでいっしょに撮ることになりました。もちろん、駅員さんもマレやムンのセーターとお揃いの赤いマフラーを首に巻いています。


 駅員さんのマフラーの端に、一生懸命しがみついているムンがあまりにもかわいく撮れて、駅員さんのみならず、ポストさんも、うれしくて仕方ありませんでした。


 実は、フォトコンテストのポートレート部門に応募する写真が撮りたくて、ポストさんは休日返上で宿舎に押し掛けて来たのです。

 でも、このことはシャイな駅員さんには、絶対にないしょでした。



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