第2話 不時着
「うわーーっ!!」
宇宙嵐に巻き込まれてしまった航宙船は、激しい振動に襲われている。
相当に厳しい揺れに、アーツたちは近くのものにしがみついて耐えるだけで精一杯だ。
どのくらい激しい揺れが続いただろうか。
五人を苦しめた揺れがようやくおさまる。
「助かったのか?」
ようやく顔を上げた五人だったが、すぐさま別の危機が襲い掛かった。
ドーーンッ!
再び激しい揺れが航宙船を襲う。
「なんだ、この揺れは!」
「わ、分かりませんよ!」
「見て、目の前っ!」
騒ぐアーツに対し、ニックは状況を答えられなかった。
慌てふためいている状況の中、クロノが叫ぶ。
「前?」
アーツがくるりと窓の外を見ると、なんということだろうか、地面が近付いてきていた。
どうやら先程の衝撃は、大気圏に突入した時の衝撃だったようだ。
「うおおおおっ! 買ったばかりの航宙船、壊してたまるか!」
近付いてくる地面を目の当たりにしたアーツは、慌てて操縦かんを握りしめる。
ぐっと引いてブレーキをかけようにも、航宙船はうんともすんとも言わない。
そういえば、システムの声も聞こえてこない。これだけ危機的な状況ならひと言ぐらい発してもいいだろうに。
「くそう、さっきの宇宙嵐で壊れちまってるのかよ。ちくしょーっ!!」
「大口を開けるな。しっかりと口を閉じて捕まれ! 激突するぞ!」
意外とレンクスが冷静だった。
その叫びにみんなが反応し、椅子などにしがみつきながらしゃがみ込む。
ドカーン! バリバリバリ……ッ!
大きな音とともにすさまじい衝撃がアーツたちを襲う。
だが、地面にぶつかっただけでは航宙船は止まらなかった。そのまましばらくの間地面を削り、周囲の木々をなぎ倒しながら進んでいく。
どのくらいの時間が経っただろうか。凄まじい衝撃を与えながら着陸した航宙船がようやく停止したのだった。
「いってえ……。みんな、大丈夫か?!」
操縦席で起き上がったアーツがみんなに呼び掛ける。
「大丈夫だ。俺は問題ない」
最初に返事をしたのはレンクスだった。
「僕も大丈夫ですよ。びっくりはしましたけど、こういう時の対処法は覚えてから来ましたから」
次に反応したのはニックだった。
対処法を覚えてきたといっているあたり、おそらくアーツに聞かされた時になんとなく予感していたのだろう。
「ブラン、クロノ、二人は大丈夫か?」
「アーツ、私は大丈夫。でも、クロノが」
「クロノがどうしたんだって?」
アーツがブランの声がした方へと走っていく。
そこでアーツが見たのは、どこかにぶつけたらしく、血を流しているクロノだった。
「クロノ、大丈夫か!」
「私は、平気。それより、他のみんなは?」
自分がけがをしているというのに、そんな状況でもみんなの状態を心配している。
「みんな無事だ。ケガをしたのはお前だけだよ、クロノ」
「そっか、それはよかった」
みんなが無事と聞いて、クロノはほっとした表情を浮かべている。
「ブラン、クロノのけがの手当てを頼む。システムがさっきから反応しないが、設備は多分使えるはずだから」
「救急設備は生きてますね。寝かせてあげれば適切な処置をしてくれるはずです。操作は僕に任せて下さい」
ニックは操舵室から移動していた。
医務室は隣だけど、いくらなんでも行動が早いと思うアーツだった。
「それより、ここはどこなんだ? 外を見ても見たことのないものばかりでわけが分からねえよ」
レンクスがやって来る。
そこでアーツは、少し考えこんだ。
「そうだな。ブランはクロノのそばにいてやってくれ。ニック、航宙船の設備の損傷具合を調べてくれ。レンクスは俺と一緒に外を少し見てこよう」
アーツはてきぱきと役割を割り当てている。こういう時は無駄に頼りになるのがアーツなのである。
他の四人は別に反対する理由もなかったので、ここはアーツの判断に従う。
「それじゃ、俺たちは外を見てくるぜ。よく分からねえからまずは近くを少し探索するだけだ。すぐに戻るから、安心して待っていろ」
「うん、すぐに戻ってきてね」
「それじゃ、ニック、航宙船のことは頼んだぜ」
「任せておいて」
ケガをしているクロノ意外と言葉を交わすと、アーツとレンクスは航宙船の外へと出ていく。
航宙船のハッチは無事だったようで、無事に外へと出ることができた。
その瞬間、むわっとした空気が二人に襲い掛かった。
「うわっ、なんだこれは」
「こんな空気、感じたことがないな。なんとなく気持ち悪いぜ」
生まれてから宇宙空間にあるコロニーで育ってきた二人ゆえ、未知の場所の外気はかなり不快なものだったようだ。
外に出た二人は当たりの様子をじっと窺いながら進んでいく。
「どいつもこいつも見たことのない植物だな」
「そうだな。ここは俺たちがまったく知らない場所だから、見たことがないものばかりでも仕方ないだろうよ」
珍しいものばかりがあふれ返った場所で、アーツとレンクスは周りを注意深く見ながら進んでいく。
しばらく進むとアーツがレンクスの前に手を出す。
「どうした、アーツ」
「しっ、ちょっと隠れるぞ」
二人はこそこそとしながら、近くの木の陰に隠れる。
しばらく息を殺しながら様子を見守っていると、ズシンズシンという地面を揺るがすような音が聞こえてくる。
「な、なんだあれは……」
音が近付いてきたので、少し身を乗り出してみる。
そこで二人が見たものは、今までに見たこともないとてつもなく巨大な生き物だった。
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