第11話 冒険者2

「鉄岩遺跡を調査してほしい?」


「はい。A級パーティーである【勇血の血潮】にしか頼めないことなのです。】


 朝依頼を受けようと掲示板を見に行ったら、受付嬢に呼び止められ、奥の応接室に通された。


一体何の依頼を頼まれるかと思ったら、よりにもよってあの鉄岩遺跡とは。


鉄岩遺跡とは深緑の森を抜けた先にある古代文明の都市だ。


国や色々な組織が調査・開拓をしようとしたがあまりの魔物の多さに長年放置され、現在にまで至る。


「しかし何でまた鉄岩遺跡の調査の依頼を?あそこは大昔に調査をしても採算が取れるか不明ということで諦められた筈では?」


「そのことなのですが...」


受付嬢が深刻そうな顔をしながら言う。


「実は最近魔物の行動範囲が広がっているのです。そこで【勇血の血潮】の皆様にはどの辺りまで魔物が出たか、どんな種類がいたかを調査してほしいのです。特にどんな種類の魔物がいたか、討伐しなくても結構なのでそこの調査を重点的にしてください。」


なるほど。確かにA級パーティーでなければ危険な依頼だ。どんな魔物が出るか分からない以上B級やC級では後れを取ってしまうかもしれない。


仲間たちと相談し受けることを受付嬢へ伝えた。


そして準備を整え鉄岩遺跡へと向かう。


 森を抜けるまでの間ゴブリンやアンデットが出たか何の問題もなく対処し、危なげなく鉄岩遺跡に着いた。


「すげーな。話には聞いてたがまじででけぇな。」


「ええ、そうですね...我々の街エルケンスより大きそうです。ジュディは帝都クロスフェイトの出身でしたよね?比べてみてどうですか?」


「広さだけなら圧倒的に帝都だけど、ここまで背の高い建物は王城以外帝都にもないよ。一体この街で何があったんだろう...」


仲間たちがそれぞれの感想を言い合いながら、それでも視線と耳で警戒を怠らない。


そして道中であったアンデットを処理しつつ、紙に遺跡の様子、見た魔物、その数を記入していく。


そして探索することしばらく。夥しい数のアンデットと遭遇する。


幸いにもこちらが先に気付き、距離を取る。だが反対側からもさっきの群れとは違うアンデットの大群が出てくる。


「なんで...!さっきまでいなかったはずなのに!」


まるでに逃がさないと言われているかのような錯覚を覚えるが、こうなっては仕方がない。


ここから逃げるために目の前のアンデットの群れへ突貫する。


そうして順調に数を減らせつつも最悪な事に後ろにいたアンデットの大群に追いつかれてしまう。


だがそれでも諦めず戦う。今より状況が悪くならないと信じて。


そうして戦闘することしばらく。なんとオーガまで出てきた。


最悪だ。俺がこんな依頼を受けなければ。なんとか仲間だけは逃がそうと奥の手を使う。


そうしてなんとか逃げ道を作るも力尽きてしまう。


「みんな...早く逃げろ...!」


なんとか声を絞り出すも仲間達はすぐに逃げず、俺をおぶってから駆け出した。


「ゴードン、リーダーをおぶって上げて!ここから逃げるわよ!」


「あいよ!シスター・アリス!」


普段使ってる敬語口調が取れるくらいヤバい状況なのに。みんなごめん。そしてありがとう。


ここから逃げ出せたら更にパーティーのために頑張ろうと決心をする。


が、しかし。天は俺たちを見放した。なんとアンデットの群れを抜けた先に更に多くのアンデットが現れたのだ!


「クソ、ここまでか」


「天よ、なぜ...」


「そんな...ここで終わりなの...?」


俺だけではない。仲間達も絶望している。こうなってはもう...。だが、せめて。せめて仲間達だけは逃がそうと決意する。


そうして命を削って魔力を練ろうとした瞬間...


ドォン!!と大きな音と共にものすごい爆発が起きる。


煙が晴れるとそこには筋骨隆々の大男が両手に大きなハンマーを持っていた。


そうしてこちらを一瞥したあと、そのハンマーを使って辺りのアンデットをものすごい速度で処理していく。


一振りで3体潰し、攻撃も軽々躱す。時折アンデットから噛みつきや腕の振り下ろしを食らうが、皮膚まで強靭なのか無傷だ。


そうして嵐のようにアンデットを潰していく。順調に数を減らせていたその時、オーガのまで現れる。


「そんな、あんなの軍隊が相手する量だよ!このままじゃあの人まで死んじゃう!」


ジュディが悲鳴を上げ、それでもなお恐怖を抑えて魔法で援護しようとする。


だが、男が奇妙な行動を取る。ハンマーを握りながらこちらを見て親指を立てているのだ。


「任せろ...と言いたいのか?」


しかし、あの量を一体どう相手取るつもりなのだろう。やはりここは無理しても援護するべきだ。


そうしようとした瞬間、男が更に奇妙な行動を取る。ハンマーを地面に置いて、。力を入れているのか壁にヒビが入る。


気でも触れたのか?そう思ったその時、。それだけでも目を疑ったのに、なんとそのままオーガの群れへと投げつけた。


結果は当然圧死。オーガだけでなくアンデットまで壊滅させた。


その結果に呆然としていると男と目が合った。この人は命の恩人だ。しかし、目的が分からない不審者でもある。


ただの善人なのか。それとも、悪人か。緊張しつつも、礼を失さないように話しかける。

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