致死獨
Onfreound
致死獨
「あぁ、君が」
恍惚な目をしていた。
幾度となく見てきたはずだが、いつもどこか新鮮味のある姿をしていた。
「......よっと」
「はじめまして、だね」
腰を下ろすとすぐに、笑みをのぞかせる。
当然のことながら、答えは待っていないようだった。
「いやぁ、君のことを聞いて楽しみにしてたのさ」
「最近は言葉だけの奴が多いからさ」
「分かるよ、君を見れば分かる。君はそこらの奴とは違う」
「それだけのものを持ってるんでしょ?」
次から次へと紡がれる言葉。
じわじわと広がるはずの距離も、今日はまだ、その兆候を見せなかった。
「理解してもらえるかは分からないけど、こちらも忙しい身だからね」
「ほら、人間は移ろい易いって言うじゃん?正直そんなわけ...って思うこともあるけど」
「だから、チャンスは逃したくないのさ」
「君にとっても、悪い話じゃない。いや、とても幸せな話でしょ?」
そこまで言うと、静かに席を立つ。
目の前には、それと、空っぽの瓶が転がっていた。
「ところで、君」
さっきまでより低いトーンで、声が響く。
否応なしに、今まで通り、その姿を目にする。
「その容器ってさ、壊れずに残っちゃってるけどさ」
「何が必要だったと思う?」
「恥ずかしながら、自分には良く分からないんだ」
「病気とか、傷とか、タナトスとか......色々聞くけど」
「君ならさ、何か出してくれる気がして」
「......いや」
「そもそも、お前次第だろ」
冷めた目。
でも、それは分かっていた。
毒の味は、未だ知り様もない。
期待外れを詰め込んで、また、独り背を向けた。
致死獨 Onfreound @LieWound
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます