『追放されたので世界を救ってやった。今さら戻れ?お断りだ。』
まさやん
第1話 追放の夜、そして目覚めた魔剣
「……これで決まりだな。レイ、お前は今日限りでパーティを抜けろ」
焚き火を囲むパーティの面々の中で、俺だけが立ち尽くしていた。
誰も目を合わせようとしない。リーダーのカイルだけが、勝ち誇ったような顔で俺を見下ろしている。
「回復もできない、攻撃も弱い、スキルも平凡。これ以上足を引っ張られちゃ困るんだよな」
(……なるほど、そう来たか)
俺は静かにうなずいた。分かってたさ。ずっと前から、俺は空気だった。
けれど、それでも俺は一緒に戦ってきたつもりだった。
「わかった。出ていくよ」
自分でも驚くほど、声は静かだった。悔しさも、悲しみも──今はもうどうでもいい。
それが、俺と”勇者パーティ”の別れだった。
⸻
辺境の村にたどり着いたのは、それから三日後のことだった。
「ああ……もう、俺の人生は終わったな」
小さな空き家に腰を下ろし、ぼんやりと天井を見つめる。
冒険者としての肩書も、仲間も、居場所も、すべて失った俺に残ったのは、傷だらけの体と……ひと振りの錆びた剣だけだった。
「……ん?」
その剣が、唐突に震えた。
《目覚めの時だ……我が主よ》
「……え?」
《我が名は“断罪の魔剣グリム”。お前を見定めていた。この力、お前にこそふさわしい》
突然、頭の中に声が響く。
まるで……剣が、喋っているように。
《お前は無能ではない。力を封じられていたにすぎん。我と契約せよ、真の力を取り戻すのだ》
「……は?」
意味が分からなかった。
だが、次の瞬間、俺の中に火が灯った。
──あいつらを、見返してやりたい。
──俺は無能なんかじゃない。
「……契約、してやるよ」
その瞬間、世界が光に包まれた。
俺の中に、信じられないほどの力が溢れていく。
そして、魔剣が笑った。
《良いぞ、主よ。さあ、復讐を始めよう──世界を救いながら、な》
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