事件の真相


「なんで私達を助けたの?」


 真っ先に硬直から解けたのはリラさんだった。その後すぐに他の皆も硬直が解け、次第に市長に突っ込み続ける。


「そもそもこの車はなんなんだ?! こんなもの見たことない!」


「どうやって俺達がいた場所が分かった!? つけられた覚えはないぞ?」


「ええい落ち着け! 彼が話せないだろう!」


 ハルスさんが二人をたしなめ、市長の言葉を待つ。市長は先程からずっと俺を見続けていた。


「……なにか?」


「ああいや。…何でもない。ただ心強いと思っただけだ。かの有名なヘレティックのメンバーが居てくれるなんてな」


「…政府が隠ぺい工作してくれたはずなんですけどね」


「私みたいな情報通の間じゃ有名だったさ。今さら隠ぺい工作しても知っている奴は知っている」


 なんでもないような表情をしながら俺の質問を軽く流した後、リモコンのようなものを取り出しボタンを押す。

 すると何も無かった場所に突如としてスクリーンが現れた。


「まずは自己紹介からするとしようか。私はリア・レイサー。この都市。フトゥールムで市長をしている。君達のことは既に把握しているのでこのまま進ませてもらおう」


 やはり彼こそがこの都市の市長で間違いはなかったようだ。

 何かを話そうとしたこちらの話を挟む余地無く、彼は会話を続けてくる。


「私を黒幕だと疑う気持ちは分かる。どうせあのジャーナリストからそう聞かされたのだろう。もし同じ状況になったら私もそうする。仕方のない事だ。だが真実は違う。…これを見ろ」


 スクリーンには大量のゾンビによって襲われているグロリアの姿。

 グロリアの周囲はかなり荒廃しており、かなり長い間激戦が繰り広げられていたのが分かる。


「……?! 待って今ゾンビの中に人が居なかった?!」


「俺も見えた! 塔に銃を撃っているぞ!」


「ああその通り。ゾンビ達に襲われない人間達が私の住むグロリアに銃を撃っている。私が君達を助ける為に外に出たのを見てチャンスだと思ったのだろう」


 驚くべきことにゾンビ達に襲われること無く、むしろ共に協力してグロリアを襲撃している人達がいた。

 数はざっと見ただけでも数十人は居る。……もしかして奴らが


「ルミナス。世界救済なんて大層な願いを掲げているバカどもだ。最近私に接触しようと躍起になっていてな。不思議に思い調べてみた所奴らの狙いが分かった。グロリアだ」


 今度はグロリアの地図が映し出される。そして塔のてっぺんに赤い丸が付けられていた。


「これは私の前の代が改良して作られた特殊な電波塔。アメリカ全土に電波を届けることができる最高傑作だ。奴らはこの部分が欲しくて今回の事件を起こしたと思われる」


「……これが原因。しかしなぜ?」


「その理由はこのゾンビ共を解剖した結果を見てもらえれば分かる。これはゾンビの脳味噌を調べてみた結果、内部から発見されたものだ」


 ゾンビの脳味噌を顕微鏡で見た映像が現れた。中にはウイルスのような小さな物体が蠢いている。

 何処となく機械っぽさを感じるその物体は電撃を喰らうと悲鳴を上げるように動き、その場に沈黙した。


「ゾンビの脳味噌にはナノマシンが埋め込まれていた。このナノマシンは空気中に散布されると生命体の脳味噌を乗っ取りその場で殺害。その後とある電波を受け取ることで、任務が植え付けられ死体の体を動かし任務をこなす。と言った形になっている」


「待って。じゃあ何で私達は生きているの?」


 その通りだ。いきなり都市内に居る人間が倒れたことからナノマシンはかなり広範囲に散布されたはず。

 しかし先に見た囚人然り、俺達然り。それなりに生き残りは居たはず。これはどういうことなのだろうか?


「それは簡単だ。ナノマシンにも耐性がある人間がいる。これは遺伝的なもので百人に一人は耐性を保持している。だから奴らは死体を動かし生きた人間を殺すように仕向けたのだ。」


「そんな兵器が…」


 全員が黙って彼の話を噛み締めていた。もしこんな恐ろしいナノマシンが世界中にばらまかれたらどれほどの被害者が出る…?

 それだけじゃない。死体を操作できると言うことはそれだけで危険だ。しかもゾンビの様子から察するに徐々に精度が増してきている。


「だがこのナノマシン。そもそも動かすのにはとある衛星では使えない特殊な電波を発生させなければならない。だからグロリアを奪いに来ている。アメリカ全土を浄化する為に。そしてグロリアの設計図を使い世界中に新たなグロリアを建てる。それが奴らの計画だ」


「……だからこの都市が襲われた。でも何で国は介入しないの? この都市はアメリカでも上位に位置する都市。政府が助けに来ないどころかむしろ囲むなんて…。」


「た、確かにそうだ! 世界を浄化するなんてやばい計画。国が賛同するわけがねえ!」


「……そうだな。だから奴らは仕込みをした。必ずどの国も動けなくするための仕込みを」


 今度はスクリーンに監視カメラの映像が映し出される。

 俺が警察署の前で敵を倒した時の映像や傭兵達が戦う姿と言った、ゾンビとの戦闘シーンが主となっていた。


「奴らはゾンビウイルスを売るとアメリカに嘘を付いた。自国の都市一つ滅ぼしてでも他国の優位に立ちたい過激派に映像を見せ、これが欲しければ何もするなと言ってな。おかげで過激派があらゆる手段を使いこの周辺を封じ込めた。後数日は絶対に出られない」


「そんな……国の為にここまでやるか?」


「……クソが!!!」


 全員の表情が曇りだす。ただ彼の話はまだ止まらない。


「そして今、奴らは締めに入ろうとしている。全ての生存者を殺すことで……な」


 新たな映像が映し出される。そこには大量のゾンビに追われている囚人達。ネズミに貪られ命を落としている白いローブを着た人々。

 ……そしてゾンビに囲まれた警察署が見えた。


「なんて量だ! 皆が危ない!」


「今すぐ助けに行かないと!」


「そう言われることは分かっている。私も市民を死なせたいわけが無い。既にこの車は警察署に向かっている。他二つのコロニーや小規模な人々は間に合わない…。だが彼らは必ず助け出そう」




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