恥ずかしい人間
ユーリイ
恥ずかしい人間
僕は僕という人間をいちばん知りたいと思っている。
最近流行りのMBTI診断などで測れるような表面上のものではなく、もっと深い、言わば深海のような、常に揺れ動く己の思考やその他に含まれる感情を知りたい。
他人を知ることは難しいことだと理解しているが、それと同じくらい自分自身を知ることも難しいことだと思っている。終わりがない。
僕は死ぬまで、いや死んでも僕のことを知りきったと思える日は来ないのではないかと不安になるほどだ。
自分について考える度に、僕は僕が勝手に作った僕という定義に縛られている気がしてならない。
僕の知ってる僕はこんなこと言わないだとか、こんなことしないだとか。
僕は自分に理想を押し付ける癖があるようだ。
昔から世間体を気にしすぎる節があった。他人に嫌われたくないと思う気持ちが強すぎて、自分に嘘をつくことが多かった。
どう思われるのか気になって、内側の自分を見せられない。性善説を信じきれない。
それはもうすぐ大人になる年齢になった今でも変わらず、僕を苦しめている。
理想の自分を追い求めることが幸せになる近道なのだと信じてきた。例え自分に嘘をつくことになったとしても、それが僕の理想なのなら仕方がないと思っていた。
多分それは間違いなのだろうと最近気がついたが、自分に正直であるより理想を求める方が楽であると思った。それと同時に、僕は自分にストイックなのではなくて、ただ単に自分を知ることから逃げていただけなのだとも気づいた。
自分を知りたくて、他人を信じたくて、幸せになりたくて。けれど、その全てが怖くて。
鍵のかかった重たい蓋をこじ開けて中身を咀嚼するけれど、それは思い描いていたよりも美味しくはなくて、美しくもなくて。
僕はこの世界に希望を持ちたかった。いつか僕が僕を認めてあげられる日が来ることを願っていた。誰かに愛されて満たされる瞬間を思い描いていた。
訪れるかも分からない幸福を待ち続けて、待ち続けて、疲れてしまった。
この世には必ず勝者と敗者がいて、僕は一度も勝者にはなれなかった。それがこの世の真理なのだと気づいてから、生きることが億劫になった。
満たされない。満たされたい。19にもなってこんなことに執着してる自分が心底嫌いだ。
家庭環境だとか、運だとか、人間関係だとか。確かに恵まれていたとは言い難い人生ではあったが、それを言い訳にできるほど不幸でもなかった。
何もかもが中途半端。僕は僕が追い求めている幸せがなんなのかすら分からなくなっている。そしてまた、自分を嫌いになる。間違った道に進んでしまったことに気づいた時、どのように軌道修正すればよいのかなんて誰も教えてくれなかった。
生きることに正解なんてなくて、きっと僕が不正解なわけでもなくて。それでもみんな正解や普通を分かったような顔をしながら生きているのだ。それが大人になるということ。
僕もいつか大人になれるだろうか。常に選択を間違えてきた僕を許せる日が来るのだろうか。そんな日が来るのなら、とささやかな希望を捨てられなくて今日も生きてしまう。
恥ずかしい人間 ユーリイ @ysmy_2411
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