第15話 熱

「……蒼真……!」


息を切らしながら、太陽は倒れ込んだ蒼真の身体を抱き起こした。


――軽い。


あまりに軽くて、思わず息を呑んだ。

骨張った肩、浮き出た鎖骨、無意識に掴んだ腰回りは、あっけないほど細い。


「……お前、こんな身体で……っ」


ぶつけようのない怒りと不安と後悔が喉を塞ぐ。

蒼真の腕は冷えていて、体温が少しずつ失われていくのがわかった。


「ダメだ、戻ろう。待ってろ、今……すぐ……!」


太陽は全身の力を込めて蒼真を背負い、小屋へ向かって走った。

夜露に濡れた草がズボンに絡まり、足元がふらついても、足を止めることはできなかった。


戸を開けて火鉢の前に戻ると、すぐに毛布を引き寄せて蒼真を寝かせた。

手当てしようとするが、手が震える。包帯はどこだ?水は?布は?


「くそっ……落ち着け、落ち着け……!」


震える手で、用意されていた水桶に布を浸し、傷口を探る。

脇腹、肩口、二箇所の裂傷。血はまだ止まっていない。


「ごめん……」


包帯を手早く巻きながら、太陽の目にはじわりと涙が滲んでいた。

蒼真は眠ったように静かで、苦しげな呼吸だけが彼の生を示していた。


「来てくれて……ありがとう。……ごめん」


その夜、太陽は蒼真の隣で毛布にくるまりながら、一睡もせずに見守り続けた。


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