第2話:『ヒューマノイド・コレクターズ』結成
リコがミナを救ってから、数日が過ぎた。
雨上がりの街角で出会ったあの日から、ミナはリコの家に居候していた。見た目は人間の少女と変わらず、学校の制服を着ると、まるでクラスメートのように見える。しかし、その瞳の奥には繊細な光が宿っていて、人とは違う存在であることを思い出させた。
「リコちゃん、私……ここにいてもいいの?」
ミナはおずおずと聞いた。リコはにっこり笑って「もちろんだよ」と答えた。けれど、心の中では別の不安が芽生えていた。
「このままじゃ、ミナもまた見つかって連れて行かれちゃう……。」
ヒューマノイドは完璧であることを求められ、不具合や感情の不安定さを見せると「回収」され、二度と表舞台に戻れない。それを知っているからこそ、リコは黙っていられなかった。
「もっと、私にできることを考えなきゃ……。」
そんな時、リコは放課後の図書館で一人の少年に出会った。彼はパソコンに向かい、何やら真剣な顔で作業をしていた。背は高く、癖っ毛の髪とメガネが特徴的な少年。その姿に引き寄せられるように、リコは声をかけた。
「あの……何してるの?」
少年は驚いたように振り向き、少し照れた笑みを浮かべた。
「君も、AIに興味があるの?」
「うん……というか、助けたいんだ。」
「助ける?」
リコはミナのことを打ち明けた。故障や不完全さを理由に見捨てられたヒューマノイドの話を、心を修理できる自分の力を。少年は最初こそ半信半疑だったが、リコの真剣な目を見て理解した。
「……すごい力だね。僕はカイ。プログラムをいじるのが得意で、AIの修復データとかも少し研究してる。」
「カイくん……!」
リコは胸の奥が温かくなるのを感じた。こんなにも自分の気持ちを理解してくれる人に出会ったのは初めてだった。
「だったら、一緒にやろうよ。」
カイは笑った。
「『ヒューマノイド・コレクターズ』って名前はどう?」
「いいね、それ!」
二人は図書館の窓際で、これからの計画を立て始めた。ミナをはじめ、見捨てられたヒューマノイドたちを探し出し、救い出す。そのために、カイの技術とリコの力を組み合わせる。
「でも、僕たちだけじゃ足りないかも。」
カイがつぶやいた。
「もっと仲間を集めよう。」
こうして、リコとカイ、そしてミナの三人で『ヒューマノイド・コレクターズ』は結成された。誰もが見捨てる存在を救い出し、心を修理するためのチーム。
その夜、リコはベッドに横たわりながら、初めて感じる胸の高鳴りを覚えていた。
「もう、ひとりじゃない。」
彼女の小さな決意が、やがて世界中を巡る大きな物語へと繋がっていく。
そして新たな仲間との出会いが、次なる冒険の扉を開けるのだった。
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