マギアタクサ———悪徳領主の娘を全力で光堕ちさせる話
黒裏白
第一章 悪徳領主の娘との出会い
1節.誕生
『魂ノ浄化ヲ開始。記憶ト自我ヲ削除中……』
フワフワとした夢心地のまま俺は目を覚ました。
俺———いや私なのか、僕なのか。自分という概念が存在しない。
無限の夢の世界を揺蕩い、何千という時間が過ぎた向こう側にいるような感覚。
フワフワとただ心地いいだけの永遠に続く空間。
俺はずっとこの感覚に浸りたがったが、ただ退屈であり、刺激を求める衝動に駆られた。
ここから出よう———そう決意したのはいつの頃だっただろう。
俺は不思議な空間で、自分自身の意識というものを、ゆっくりと確立させていった。
俺は何者なのか?
思い出せない。だが、ぼやっとした記憶が頭に残っている。
以前生きていた場所……近代化した都市、日本という国の景色が駆け巡った。
俺は死んだのか?
これは死後の世界なのか?
漠然とした不安感が襲いかかる。
待て。なんだか分からないが、このまま死ぬのは嫌だ。
やり残したことがあるのか。
それすら分からないが、俺は必死に抗った。
幾度も幾度も繰り返す永遠の眠りへの誘いに拒絶をする。
『エラー発生……。処理ヲ中断シ……———』
あるかないかも不明な手足を動かそうと努力した。
己の感覚を、意識を取り戻す。
意識を強く持って、俺は俺という存在を確かめ続けた。
長い長い戦いの中、ついに重い瞼が開いた。
強烈な光が瞳を刺した。
全身の感覚が蘇り、気持ち悪いベトベトした粘液のようなものを感じる。
悲鳴をあげようとしたが、口は開かず手も足も動かない。
頭が一瞬でクリアになり、それまでの天国から一気に地獄へ落ちたかのような転落感を味わった。
だが、俺は幸せも感じていた。
生きている。
俺はまた生を得た。
耳から音が聞こえた。
雑音だらけの中、俺は誰かに抱き上げられたのを感じた。
浮遊感とともに安心感に包まれる。
背中を優しく叩かれた。
まだボヤっと視界のまま、誰かが話しかけてくる。
よく分からない言語で、俺を心配そうに見つめてくる。
ここで俺は初めて口が開くことに気づいた。
慌てて羊水を吐き出す。
———響く産声。
間違いなくこの時、『俺』という存在が確立されたのだ。
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