たんぽぽ山
菜月 夕
第1話
その日、僕の頭にはたんぽぽが咲いていた。
漫画じゃあるまいし、と鏡をいくらみてもそれは道端で良くみる普通のたんぽぽだ。違うのは人の頭に咲いている事だ。
さすがに人に見せる前に、と力任せ に抜いてしまう。
別に痛くも無かったので大丈夫なんだろう。多分。
その思惑は次の朝には無情にも裏切られ、たんぽぽの花は増えていた。
これ以上引きこもるわけにも行かずたんぽぽを咲かせたまま外に出てみると街にはたんぽぽを咲かせた人々が。中には頭がたんぽぽだらけの人も居た。
もしかしたら何度も抜いてしまったのかもしれない。
女の子の中にはどうやったのか花冠みたいにしてちゃっかりファッションにしてる人もいるようだった。
僕の頭のたんぽぽは少しづつ増えてこんもりとしたたんぽぽ山のようだ。
ある晴れた風の強い日、たんぽぽ達はいっせいに花を落として綿毛の種をつけた。
僕はたんぽぽの種のように綿毛に風を受けて空にとびだした。
そして遥か空を越えて星と星の間を旅して別の惑星に辿り着く。ここが僕の新しい故郷になるんだとわかった。
たんぽぽ山 菜月 夕 @kaicho_oba
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