アイデアノート

とくちゃ

Idea01-『無価値スキルの子を拾った“戦鬼”は、世界のお父さんになりました』

# プロローグ

## ――価値など、誰が決めた。


「この子は──取るに足らぬ、“下賤なスキル”しか持たぬようだ。

 我が家の名に泥を塗る前に、とっとと立ち去らせてもらう。

 無価値なものに与える席など、我が家には存在しない」


声高に言い放ったのは、王都に名を轟かせる貴族家の当主だった。

その言葉に、場の空気は凍りつくでもなく、むしろ当然のように流れていく。

ここでは、“スキル”こそが人の価値であり、それがなければ存在理由もなかった。


そんな空気を、重く響く足音が切り裂いた。


「……なるほどな」


その声に、誰もが振り返った。

重厚な黒の外套、鋼のような眼差し。

かつて戦場で三国を震わせた英雄、**戦鬼バルドル**。


彼の名は知れ渡っている。だが、その人物像を真に知る者は少ない。

民の多くは「力こそすべての男」と思っていた。

豪胆で、黙して語らず、ぶつかって道を切り開く者だと。


だがそれは、ほんの一部でしかなかった。


彼は──『受継者』だった。


成熟した人格の中に、ある日、別の記憶が流れ込んできた。

それは、別の世界で誰かが生きた、ひとつの人生。

バルドルはそれを「知識」としてではなく、「想い」として受け止めた。


だからこそ彼は、変わった。

戦うだけではなく、育てる道も選んだ。

奪うのではなく、価値を見出す者になった。


彼は無言で、捨てられた子どもの前にしゃがみ込み、目を合わせた。


そして、静かに告げた。


『お前が無価値と罵った娘、息子がそんなに憎いなら──俺が貰い受けよう』


「な、何を──!?」


『後になって返してほしいと言っても、知らぬからな。

 この子らはこの時を持って──俺の息子、俺の娘だ』


沈黙が走る。


バルドルはその小さな手を、しっかりと握りしめた。


『安心しな。俺の領地では、誰もお前らを下に見る者はいない。

 そこで──お前たちは“生きる”んだ』


その日から、何かが変わり始めた。


スキルで人を測る時代は終わりを迎え、

人そのものが価値を持つ時代の始まりを迎えた。


ある者は学び、ある者は畑を耕し、

ある者は市場をひらき、ある者は教える者となった。


バラバラだった役割が「繋がっている」と知ったとき、

子どもたちは胸を張って言えるようになった。


「俺のスキルは……今このために存在したんだ」

「私は、誰の代わりでもない、“私”として生きてる」


そして、誰かが言った。


「この世界には、もう“捨てられる子”なんていない。

 だって、『世界のお父さん』がいたから」


──そう。彼の名は、バルドル=アルグレイン。

かつての英雄が、すべての“無価値”から“価値”を見出した男。

この物語は、その始まりの一歩である。


__________________________________________


あとがき

近年の異世界転生ものとか、追放ものってよくあるけど、追放された側がチート能力で成長しては「ざまぁ」か感じになるけど、そうではなく、むしろ無価値から価値を見出すような内容もありかなーと思ったアイデアノート。現状は創作する気は無いんだけど、このいう流れもありかなぁと書いてみたものです。ここでは主に思いつきでこういうものを上げていこうかなと。そしてそれが誰かのアイデアに繋がるならそれはそれでいいかなと思ってます。

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