第5話 予備校のダメダメ先輩と音合わせ
火曜日の夜がやってきた。
山鹿も川本もバイトが休みの日なので先週もカラオケ店で楽しんでいた。
昨年の夏から予備校で一緒のことが多かった川本先輩がいつもお金が無さそうにしているのはヘビースモーカーであることが原因だ。
灰皿があるところでは立て続けにスパスパとスモークを吐き出しているし、ポケットいうポケットにはライターが入っている。タバコだって安くはない。2006年の夏から値上がりしてセブンスター20本入りで300円だ。これを一日に3箱は空にするから金欠は必然である。
タバコの値上げはタバコ税制による税率のアップがほとんどでタバコの価格の半分以上が税金だ。高くて困るなら健康のために買うのをやめなさい、吸うのをやめなさい的な国の方針、ニコチン中毒でタバコを辞められない人から税金を遠慮なく徴収している政府なのである。
自動車を走らせるのに欠かせない石油燃料であるガソリンや軽油(ディーゼル油)、マイカーや事業用にかかわらず給油すれば税金を支払っている。ガソリン1リットル170円としたら約半分は税金だから、アメリカンなV8エンジンのスポーツカーやイタリアンなV12エンジンのスポーツカー、国産車ならV8エンジンのレクサスとか、ちょっと古いFD3のRX-7の大食いロータリーをブイブイとドライブしながらスパスパとタバコを吸っている人は国にとっては優良納税者。
博多大好きなアメリカおばちゃんの店で週給でバイト料をくれるところで夕方からバイトをしていると言う川本先輩。
バイト料は毎週月曜日に6日分を現金でもらえるようで、この日も長財布は分厚い。
「おばちゃん≪グランママ≫にお願いしたのよ、バイト料、現金なら全部千円札でって。タバコ自販機でも使いやすいし」
「週給って、アメリカンっスよね」
「やろー、いいバイト見つかって良かったよ」
「で、何の店なんスか?」
「今度連れて行くけ、それまでは内緒内緒」
カラオケ店にお互いのギターを持ち込んで、ピンコードをカラオケマシンのマイクジャックに差し込む。マイクは通常2本しかセットされていないが、4つマイクジャックがあるので2本のエレキギターをセットできるのだ。
「最初はボリューム低めにしておこう」
「曲に合わせて自由にコード引いてみようか、山鹿ちゃん先に選曲して歌って」
山鹿はラルク(L'Arc~en~Ciel)の「Driver's High(ドライヴァーズ・ハイ)」でスタート。疾走感あふれるロックナンバーは川本先輩がコードでリズムを刻んでも邪魔にはならない。
間奏ではリードのメロディーにもチャレンジして、そのまんまとはいかないが雰囲気はでていた。
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