盆と宴

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第1話

この小さな街に狐の面を被った人達が増えたのは、言うまでもなく盆の時期が近づいて来たからである。


 物心ついた時から、ずっと同じ光景を見て来た私には特に違和感はないが、他所から来た人は結構ビックリするようで、生垣の角や草木に隠れてその様子を見るのが好きだった。


 しかし、そんな中には、たまに驚くどころか悲しそうな、懐かしいような顔をして、今にも涙を流してしまいそうな人もいる。


 私はどうしてそんな顔をするのかと子供ながらに不思議に思っていたが、毎年見ているとなれば、何となく、悲しい顔をする人や懐かしいと言った顔をする人達の気持ちも分かるような気がする。


 『あれはきっと、自分のご先祖様と久しぶりに会っているのだ。』


 そもそも狐の面を被っているのは、何も行事的だとか、何かのお祭りだとか、そういうものではなくて、帰ってきたご先祖様が目立たないように、生きている人達が自発的に被っているだけのことなのだから、その中にはご先祖様達だって紛れているはず。


 他所から来た人達だって、まさか生きている時とは別の土地で、自身のご先祖様に会うなんて思ってもないだろうから、当然、心構えなんてできなくて、あんな悲しい顔や、懐かしい顔をするのだ。


 そして、きっと、その再会を喜ばしく思い、少しお高めの肉や海鮮を買って、盆の夜は盛大に宴をあげるのだろう。


 『私もいつか、母や父に再会して、いろんなお話ができたらいいなぁ。』


 そんな事を思いながら、私は久しぶりに帰って来たこの街を、漆塗りの真っ白な狐の面を付けて歩いていくのだった。


 『面の下からでも気づいてくれるかなぁ?』


 


 


 


 

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