第2話 まさかの再会

 

 すぐさま周囲を確認!

 敵影は……無し。


 よし。すぐ死ぬ事がないなら現状確認。


『ステータス』


 ん? 今発声がおかしかったような……。


 そんな僕の疑問はステータスを見て解決した。


 ―――――――――――――――

 レベル:1

 種族 :キラービー

 筋力 :E

 耐久 :E

 精神 :A

 魔力 :D

 敏捷 :D

 幸運 :Z

 スキル:[輪廻][悪食][嗅ぎ分け][吸収][ポイズンニードル]

 称号 :[異世界より来たりし者][死神に愛されし者]

 ―――――――――――――――


 蜂だった!!

 スライムに続き人型ではないけど……。うん、動くのに支障はなさそうだね。

 

 背中に生えてる羽根を軽く動かしてみたけど問題ない。

 ちゃんと自分の意志で動かせる。


 しかしさっきのはいくら何でも不幸すぎだよ。

 転生したら周りが敵しかいないとかあり得なくないかな?


 お陰でスライム時のステータスは分からなかったけど、どうやら[吸収]のスキルを持っていたらしい。

 そしてこの蜂の身体は[ポイズンニードル]のスキル、詳細には射出系とあるな。


 ……なんでこれだけ英語なんだろ?

 毒針でいいんじゃないの?

 神とかが直感で決めてんのかなぁ?


 まあそんな些細な事はいいや。

 なにせ油断すればすぐ死んでしまうのだから。


 [ポイズンニードル]やこの身体の性能を確かめねば。


 谷の近くで転生したし、崖に向かって使ってみるか。


『[ポイズンニードル]!』


 おふっ!?


 尻から生えていた針が凄い勢いで射出されていったけど凄い感覚だな。


 ちょっと汚いけど例えるなら1週間便秘の後の快便みたいな?

 そんな酷い便秘になった事ないから知らないけど。


 これを連続で使いすぎると別の何かに目覚めてしまいそうで怖いけど、使わないと死ぬならガッツリ使うよ。


 ……さて、それではお楽しみ。空を飛びたいと思います。

 いやー空を自力で飛ぶってのは人の夢の中でも上位に位置するんじゃないだろうか。

 今、人じゃないけどね!


 ただいくら飛べる種族になったからといって「I can fly!」とか言っていきなり崖に向かって飛んだりはしない。

 なにせ幸運Zが何をしでかすか分かったもんじゃないからね。

 ここは慎重に一先ずこの場で浮いてみるとしよう。


 —―ブブッ


 虫独特の薄い羽根の音が背中から響いてくる。


 徐々に身体が軽くなっていき浮遊感を感じた。

 これはいける!


 フワッという擬音が聞こえてくるのではと錯覚するような感覚が身体全体を包み、今、僕は人類(?)史上初の生身での飛行に成功した。


 浮いてる、浮いてるよ!

 おおぅ、何というか言い表せない感動が胸の奥から溢れてくる。

 落下系絶叫マシーンとは違う浮遊感。

 素晴らしい……。


 やっばいこれテンション上がるな!

 今まで裏切りや不意な事故、冒険者達からの攻撃で散々な目に遭ってきたけど、そんな事も忘れてしまいそうなくらい今、メチャクチャ楽しい!


 よしせっかくだし浮いてるだけじゃあれだから移動してみよう。


 本能の赴くままに羽根を動かし、八の字に動いたりジグザグに動いたり、全力で真っ直ぐ進んでどれだけ速く動けるかと色々やった。


 ふう。やっぱり死ぬってストレス溜まるんだな。

 さっきまで気付かないくらい内に溜め込んでた陰鬱な気分が一転して気分爽快、心が晴れやかになっていく。

 谷を飛びながらそんな事を思っていた。


 フラグだった。


 突然吹き荒れる風が僕を襲う。

 忘れてたぜ幸運Z。

 そんな奴が谷を飛んでたらどうなるかなんて誰もが予想出来るよな!


 ああああやべえぇぇぇ!!!

 身体が上手くバランスが取れなくて谷に落ちていっちゃうぅぅ!


 ああ、もう地面が目の前に……。

 だが簡単に死んでやる気なんてない。

 こうなったらぶつけ本番、行くぞスキル[吸収]!!


 ――ビタンッ!!


 ………


 ……………


 …………………


 痛ってええええええええええええええっ!!!!!


 [吸収]使ったのにダメージがまるで緩和された感じが無いくらい、メチャクチャ身体が痛いいいいい!


 やっぱり[吸収]スキルはスライムみたいな不定形生物特有のスキルなのかな?

 辛うじて生きているけど[吸収]で衝撃をわずかに緩和しただけだったし。

 しかも背中から落ちたせいで羽根もボロボロになってしまった。


 もう飛べなくなっちゃったよ……。 (´;ω;`)ウッ…


 はあ、体中痛いけど生きてるだけ儲けものと思わないと……。

 しかしこの谷深いな。

 一体ここは――


 蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻

 蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻

 蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻

 蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻

 蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻


 いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

 過去のトラウマ再びぃいいいい!!!!


 谷にあるのが僕を一番最初に殺した蟻の魔物、アーミーアントの巣だったなんて不幸すぎるでしょ。



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・あとがき


甘井の小説に興味がありましたら下記作品もよろしくお願いします。

・【ああ、課金してぇーー!!!】

https://kakuyomu.jp/works/16816927861122954000

現代ダンジョンもので、主人公が不憫ながらも頑張ってレベルを上げる話です。

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