第1話 ゴブリン→コボルト→スライム


 ―――――――――――――――

 レベル:1

 種族 :ゴブリン

 筋力 :E

 耐久 :E

 精神 :A

 魔力 :E

 敏捷 :E

 幸運 :Z

 スキル:[輪廻][悪食]

 称号 :[異世界より来たりし者][死神に愛されし者]

 ―――――――――――――――


 僕の[輪廻]スキルは間違いなく発動したみたいだけど、ちょっとこのステータスはおかしくないですかね?


 このステータスで明らかにおかしな点は2つある。


 身体能力に関わる部分が変化するのは分かる。

 まあ元のステータスがゴブリンと同じだったのはちょっとショックだけど、それはいい。

 問題は幸運と称号だ。


 幸運の評価がZってなんなのかな!?

 Eが最低だと思ってたのにS~Eですらない何かってなに?


 意味が分からないので目の前で浮いているステータスボードにタッチしてみた。

 このステータスボードの使い方がスマホのように使えるのはありがたい。これで詳細が確認できる。


 Z:絶望


 ちょっと待とうか。

 良いとか悪いとかの規格表記じゃなくて感情表記ってなんだよ。


 だけどある意味分かりやすいかな。幸運が天元突破で悪いってことは伝わって来たよ。泣きたい。


 くっ、次に称号だ。

 何なんだこの[死神に愛されし者]って?


[死神に愛されし者]:死にます


 説明する気0かな?

 もっとちゃんと説明してほしいんだけど!?


 あまりにも説明文が機能してないので何度も連続でタップし続けたら表記が変わった。


[死神に愛されし者]:死にます。とにかく死にます。とりあえず死にます。


 「ちくしょおおおおおおおおお!!!!!! 仕事してくれステータス!!」


 ……はぁ。叫んでたら少し落ち着いてきたし、周囲を見渡す余裕も出来た。


 ふむ、どうやら僕は洞窟にいるらしい。

 魔物の生まれ方は交配や分裂で生まれるか、突然世界に出現する方法の2種類あるらしいけど、どうやら僕は後者のようだ。

 自分自身でそれを経験する日が来るなんて思いもよらなかったけど。


 さて、とりあえず外に出てみよう。

 洞窟と言っても浅くて何も無い所だ。そんな場所でぼんやりしていてもしょうがない。

 僕はゴブリンとして生き抜いて見せる!


 そうして僕は洞窟を出た。

 眩しい太陽を感じる。

 そう思った次の瞬間、辺りが暗くなり――


 頭に何か衝撃を受け意識を失った。


 ◆


 目が覚めたら毛むくじゃらの何かになっていた。


 ……おかしくない?

 え、一体何が起こったの?

 何かが急に上から降ってきたと思った瞬間に死んだんだけど。


 嘘でしょ? これが[死神に愛されし者]の効果?!

 怖っ! 理不尽すぎるよ……。


 まじで『とにかく死ぬ』の意味を思い知った。

 気を抜けば死ぬという事か。

 とにかく自分が何者か確認しなければ。


「ステータス」


 ―――――――――――――――

 レベル:1

 種族 :コボルト

 筋力 :E

 耐久 :E

 精神 :A

 魔力 :E

 敏捷 :D

 幸運 :Z

 スキル:[輪廻][悪食][嗅ぎ分け]

 称号 :[異世界より来たりし者][死神に愛されし者]

 ―――――――――――――――


 どうやら今度はコボルトになったようだ。


 ん? さっきは気にしてなかったけどスキルが増えてる。

 [悪食]がゴブリンの時持ってた事を考えると、[嗅ぎ分け]はコボルト特有のスキルと言う事かな?


 死ねば死ぬほどスキルを得られる、という事なのかもしれないなぁ。しかしだからと言ってそう簡単に死んでやる気はない。

 僕は自分から死ぬことだけはしないと決めているんだから。


 よし、今度こそ僕はコボルトとして生き抜いて見せるぞ!


 見渡す限りの森。

 どうやら僕は森の中で転生したようだ。

 早速[嗅ぎ分け]を使って周囲に敵がいないか――


 ――ガサッ


「おっ、ここにいたぞ!」


 物音がして振り向いた先には剣を持ち胸当てを着けた冒険者たちが。

 スキルが間に合わなかった……。


 でも僕には敏捷Dが――


「逃がすな、殺せ!」


 逃げる間も無く僕の身体に剣が刺さっていた。


 いや、犬のくせに遅っ!


 そうして僕は意識を失った。


 ◆


 くっ、また死んだか!

 だけど僕には[輪廻]で何度でも転生できるのだ。

 現状を確認……。


 ふむ、僕はどうやらスライムに転生してしまったようだ。

 どこかのアニメみたいな状況と同じである。


 身体がいきなり不定形になったせいで少々動揺してしまったけど動かし方は感覚的に分かるな。

 いいでしょう。それならスライムとして生き抜いてみせる。

 他の魔物を支配下に置く最強のスライムになるぞ!


 そう決意して周りを見渡すと、沢山の冒険者達に取り囲まれていた。


「あ? なんでこんな所にスライムがいやがるんだ。とっとと殺せ!」


 ……どうやら転生した場所は冒険者達が狩りか何かの後、休憩していたところのようだ。


 ぼ、僕は悪いスライムじゃ――――グハッ!


 転生してまだ一分も経ってないどころか、ステータスとか確認する前に殺されてしまった。

 まだ一日どころか一時間もおそらく経ってないのにもう3回も死んでしまったよ。

 だけど僕は諦めない。

 次の転生こそは生き抜いてみせるぞ!



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・あとがき


甘井の小説に興味がありましたら下記作品もよろしくお願いします。

・【ああ、課金してぇーー!!!】

https://kakuyomu.jp/works/16816927861122954000

現代ダンジョンもので、主人公が不憫ながらも頑張ってレベルを上げる話です。

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