第4話 ただそれだけ―

本編 「第6話 街の悲劇」後の内容です。

第6話を先に見ることをお勧めします。

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ギアが戦いの後、帰らぬ人となった。

リア・カップに殺され、気づけば白い空間に飛ばされていた。

一つ、ぽつりと本が置いてあって、本の題名は読めなかった。


「この文字、俺たちの世界の文字の筈なのに、なぜか読めない…」


―どんどん言葉の記憶がなくなっていく。


―どんどん知らない、言葉が入ってくる。


いつの間にか本の題名が自分の世界の字だと分からなくなってしまった。

「なんだ?この字。見たこともない…気がする。」

さっき言った言葉すらも覚えていない。ただあるのは知らない記憶と、本だけ。


ギアは本を開き、中の文字を読もうとする。

それは生きている間のギアには読めない、聖字で書かれた本であった。

しかし、刻まれた文字が読める。聖字が読めるようになった。


―それは完全なる『死』を意味する。


それを理解せず、ギアは本の内容を読み進める。


          ◇ ◇ ◇


ギア・カタロスとその兄、グラ・カタロスは7歳の時に両親を亡くした。

二人ともギルド冒険者で、ギルド内では名の売れていた人たちだった。

しかし、ある日二人はクエスト中に、命を落とした。

ギアとグラが生きている間に教えられなかった真実がある。

二人は両親が魔獣によって殺され、亡くなった。そう伝えられていた。


しかし、真実は全く異なる。

二人の両親は謎の組織に会い、フリードという地で凍らされて亡くなった。

二人はクエストの途中で謎の組織に殺されたのだ。


最後に、ギアとグラに伝えよう。

―新しく転生し、もしリア・カップと出会ったなら、味方につけ。それは、両親の仇をとることができるだろう。


          ◇ ◇ ◇


「そうだ。俺は魔獣に殺されないように、両親みたいになれるように、母さんの、父さんの分まで生きられるように、俺は強くなろうとしたんだ。」


強くなろうとした。強くなりたかった。

それなら努力すればよかった。能力なんかに頼らない人になりたかった。

ただ、それだけ。ただ、それだけなのに、道を踏み間違えてしまった。


楽なほうに行きたかった。能力があれば何とかなると思っていた。

努力するのが面倒だと、いつからか思ってしまった。

ただ、それだけの理由で、裏クエストというものに首を突っ込んだ。


能力が欲しかった。能力で努力せず、強くなりたかった。

裏クエストを受けて、強くなりたかった。

ただ、それだけで、受付嬢を殴り飛ばし、反撃され、捕まった。


仕返しがしたかった。俺の人生を邪魔してほしくなかった。

見たこともない強さの受付嬢が羨ましくて、憎かった。

ただ、それだけで殺そうとした。


最初はよかった。だけど、ただ自分の気持ちが変わっただけで、能力に頼りたいと思っただけで、死ぬことになってしまった。


―いや、真実を知っていればこうなることはなかったかもしれない。

両親の仇をとるために、努力を怠らなかったかもしれない。

でも、能力が欲しくなるのには変わりはなかったのかもしれない。


いくらでも改善点はある。しかし、やり直すことはかなわない。

だから、転生したら、俺は―――――

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