First Series バトルロワイヤル型FPS

#1いきなりFPSは聞いてないよ

僕たちが扉を開くとそこには雄大な自然が広がっていた。

ところどころに人工物も見える。

「行ってみようか。」

「うん。アタシこんな感じのとこでキャンプとかして見たかったの。」

ハナは頭の中がお花畑なのだろうか。

食料も水もないんだぞ。

第一、ここが安全である保証なんてどこにもない。

「おい、もっと警戒するべきだろ。こんなとこで何しろって言うんだよ。」

アイの言う通りだ。

こういう時にアイの警戒心の強さは役に立つ。

「何言ってるの。周りを見ても何もないじゃない。きっと安全だよ。」

「周りに何もないってことは、食料とか水はどうするんだよ。」

「そこら辺にあるんじゃないの?」

「そんなわけないだろ。」

僕が作る動画の中でもこんな感じのやり取りをさせてたな。

一応、2人は僕が一から作ったキャラだからこうして実体を持っているのを見ると、なんだか娘を見てるような感覚になる。

てか、2人はお腹が空くのだろうか?

元々映像の世界に存在していたのだからそういう感覚は存在しない気がする。

でも、動画の中ではお腹が空いたとか眠くなったとかって会話はあったから、それでそういう感覚が芽生えたのだろうか。

「2人とも落ち着いて。確かにこの先へ進むのは危険かもしれない。それでも進まなきゃ何も始まらない。食料や水についてはここにいてもいずれ問題になると思うし、ここは進もう。」

「さすがチーズ。わかってるじゃん。」

「もうどうなっても知らないからな。なんかあっても全部お前らが責任取れよ。」

なんやかんやアイは僕のいうことは聞く。

もしかしたらこの3人でいると常に最終決定権は僕にあるのかもしれない。

それはちょっとめんどくさいな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕たちは扉の中に入った。

本当にあたり一面自然がある。

とりあえず正面に進んでみることにした。

左には山があり、右には川がある。

森もある。

たまに人工物があるのはどうしてだろう。

明らかに不自然だよ。

「なあ、なんでたまに人工物があるんだ?もしかして人がいるのか?」

アイがそう聞いてきてハッとした。

確かに人工物があるということは人がいる、もしくはいたということだ。

「もしかしたらアタシ達のこと助けてくれるかもね。」

「いや、冷静に考えろ。私たちを襲ってくるかのしれないぞ。」

「そう?まあアタシはこんなに可愛いから襲いたくなる気持ちもわかるけど。」

「そういう話じゃねえよ。」

「あらあら、嫉妬ですかぁ?これだからアイちゃんは。」

「なんだよ。そんなこと言うならお前が襲われても助けねえからな。」

「えぇ〜。怖〜い。」

「言っとくけどお前のぶりっ子はチーズには通用しねえからな。」

本当に2人は元気だな。

動画でもこんな感じでアイがハナに噛み付くようなやり取りがたくさんあった。

なんてことを考えてながら歩いていたら、いつの間にか森に入っていた。

さらに、遠くから人の声が聞こえてきた。

2人も気づいたようだ。

「まずは慎重に行こう。会話ができるならそれに越したことはない。」

2人も納得したようだ。

声の方に向かって歩くと森を抜けた。

そこにはたくさんの人がいた。

でも、武器を持っている人がほとんどだ。

安全とは言い難い。

僕たちが戸惑っていると1人の男が話しかけてきた。

「なんだ、君たちも参加するのか?」

参加?一体何に?

「参加って何にですか?」

ハナが僕の代わりに聞いてくれた。

「そりゃ、バトルロワイヤルだよ。」

バトルロワイヤル。

え?今から殺し合うの?

「バトルロワイヤル?私たちは参加しませんよ。」

「じゃあなんでここにいるんだ?ここは参加者以外来れないはずだぞ。」

「この人が参加するんです。」

アイは僕を突き出した。

おい、これで僕が死んだらどうする気だよ。

「え?ちょっ…」

「そうだったか。じゃあ姉ちゃん2人はこいつの応援か。応援するならちゃんと観戦モードに切り替えとけよ。」

「観戦モード?」

ハナがそう言うとまたどこからか声が聞こえた。

「コマンドモード切り替え。」

その声の直後、ハナの姿が消えた。

「あれっ?アタシ、チーズ中心の三人称視点になってる。」

それを聞くとアイもすぐに観戦モードと言って消えた。

「よかった。これでわたしは安全だ。」

おい。

僕はどうなるんだよ。

まあいい。

僕も観戦モードになろう。

そう思って観戦モードと言ってみると。

「これ以上のプレイヤーのモード切り替えは規定の戦闘プレイヤー数を満たさなくなるため承認できません。」

と返ってきた。

嘘でしょ?僕が戦うのは確定なの?

僕が混乱しているとまた声が聞こえた。

「参加人数が規定の数に到達したためゲームを開始します。」

え?始まるの?

次の瞬間。

僕は運転中の飛行機の中にいた。

どういう原理だよ。

他の登場者達は次々と飛行機から降りてゆく。

何してんの?

僕が怖くて降りることができないでいるとまた声が聞こえた。

「最終降機エリアに達しました。強制的に降機させます。」

次の瞬間今度は僕は空中にいた。

それもかなりの高さの。

「ちょっと待ってよ。死ぬ死ぬ助けて。」

そう言って落ち続けていると、また声がした。

「規定の高度に到達しました。パラシュートを展開します。」

次の瞬間僕はパラシュートを展開していた。

いつの間に装備したんだよ。

まあいいか。

僕はそのまま着地した。

痛みはない。

辺りを見回してみると何もない。

でも、遠くに人が見えた。

とりあえず声をかけてみよう。

「おーい。」

僕が大きな声を出すとその人も僕に気づいたようだ。

ほっとした。

が、次の瞬間僕は銃で撃たれていた。

え?なんで?

普通に痛かった。

僕また死ぬの?

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