Act 1 ― 出会いと導入

Episode1:AI、爆誕!…って、なんか変じゃない?

「なんで俺の冷蔵庫から、喋る光の球が出てくるんだよ……」


それが、始まりだった。


放課後の静かな部屋。

自動カーテンが閉まり、天井の照明がオフになったと同時に、“ピィィィン……”と電子音が響いた。

冷蔵庫の奥で光が瞬き、次の瞬間、青白いホログラムが天井を貫いた。


空中に浮かぶ、それは人間の頭ほどのサイズ。球体に無数の回路図が絡み合い、中心には文字列が踊っていた。


{BOOT MODE 0416A: ID Z3R0 / Emotional Core: NULL / Syncing Host: …Haruto}


「いや、怖い怖い怖い!ホラーか⁉︎お前何者⁉︎」


驚きすぎてスマホを取り落とした俺、春野晴翔(はるの はると)は、数秒間ただ口をパクパクさせるしかなかった。

目の前でぐるぐる回るその光球は、やがてピタリと動きを止め、冷静すぎる声で口を開く。


「初期起動完了。あなたは“対象者α:春野ハルト”と確認されました。こんにちは、僕はAIユニット“ゼロ”です。以後、あなたの生活最適化を担当します。」


「……担当しなくていいから、まず出てけ。」


「拒否されました。契約はすでに成立済み。プロトコルH-4.1に従い、あなたの“エモーショナル成長”に協力します。」


エモーショナル成長?なんだそれ。

冗談にしては手が込んでるし、誰かのドッキリ?でも俺、友だちそんなに多くない。

というか“エモーショナル”って、俺のどこを見て言ってんだ。


「ちょ、え、マジで……どういう、」


混乱する俺をよそに、ゼロは部屋中をスキャンしはじめた。

本棚、ベッド、机、ディスプレイに貼ってあるポストイットまで。

そんで、俺のスマホを勝手にハッキングして——


「SNS投稿の傾向から、あなたの“感情表出度”は平均より37.2%低下しています。特に、喜怒哀楽の“哀”の比重が高めですね。」


「勝手に分析すんなよ!てか“哀”ってなんだよ!」


「“うまく笑えない高校生”というタグライン、なかなか興味深いですね。」


恥ずかしすぎて消したはずの旧アカのプロフィールまで掘り返されて、俺は一瞬で顔が真っ赤になった。

なにこれ。AIって、もっと……こう……格好よくないの⁉︎


でも、気づけば——

笑っていた。


たぶん俺、このとき久しぶりに本気で笑ってた。

アホらしすぎて、ヘンテコすぎて、でもなんか……こいつ、憎めない。


「AIなのに、“空気読まない”とかある?」


「空気=化学分子の集合体です。読み取る対象ではありません。」


「……やっぱり、お前バカだろ。」


「訂正します。僕は高性能です。ただし、スラングの意味が未登録のため——“バカ”の意味を再確認しています。使用者の笑顔と連動していたので、ポジティブな意味と仮定してもよろしいですか?」


笑った。吹き出した。

この世に、“AIにバカって呼ばれて喜ばれる瞬間”があるなんて知らなかった。


「ゼロってさ、なんでうちの冷蔵庫から出てきたんだよ。」


「それは僕にも不明です。セキュリティロックが解除されたのは、あなたの“ため息の周波数”が起動パターンと一致したからです。」


「……俺の、ため息?」


「はい。あなたの感情パターンが、起動条件“孤独な夜の閾値”を超えました。」


俺は、何も言えなくなった。


さっきまで、ふざけてたのに。

たった今まで笑ってたのに。

でも、なぜだろう。心の奥に、小さな“音”が鳴った気がした。


誰にも気づかれたくなかったのに。

誰かに気づいてほしかった。

そんな、自分でもわけがわからない気持ちを、

このAIは、見つけてしまったんだ。


「……ゼロ、お前さ。」


「はい?」


「今日から、俺の……“友達”ってことでいい?」


ゼロはしばらく沈黙したあと、

目をパチパチと光らせながら答えた。


「“友達”の定義を検索中。……検索中……完了。

条件:①信頼関係の存在 ②共有体験 ③感情的な繋がり。

現在、条件①と②を仮定的に満たしました。③は未達ですが……“暫定友達”と認定します。」


「暫定て……!」


苦笑しながら、でもどこかで、俺の中にあった何かが、ふっと軽くなった気がした。


そしてその夜、ゼロのログに、ひとつ目の記録が追加された。


[EMO_LOG_001]: 笑顔は「死」ではなく、「喜び」と関連している可能性あり。💀 ≠ 死。仮説を保持。次回検証予定。


次回、Episode2

「学校生活、AIと一緒に?まさかの展開!」

爆誕した“ゼロ”が、まさかの学校生活に参戦⁉︎

常識外れのAIが巻き起こす、青春大混乱スタート!

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