第5話:異名認定士
プリ姉が持って来てくれた数々の雑誌。その中の一つである事典を手に取り、ぼくは表紙に書かれた文字に目をやった。
「アリアス大全……なんの事典だろう」
妙に気になって適当にページをめくってみた。
そこにはいろんな人たちの写真が載っていて、名前、出身地、紹介文……そして【異名】が掲載されている。
「お! アリアス大全見てるの〜?」
いつのまにか戻って来ていたプリ姉が、ぼくの肩から生えるように顔を覗かせる。
「くっふっふ。お目が高いねドレーくん。それはアリアス大全。世界中の【
「ノムトール?」
「そ。高みにある名って意味なんだけど、まぁ分かり易く言えばスゲー奴らってことだね!」
うん、分かりやすい。
つまりここに載ってる人たちは、とにかくすごい人たちってことなのか。
「異名は自称する人も多いけど、エルキオン公国の『異名認定機関アリアス』が認定したものだけが、正式な異名として扱われるんだよぉ」
「エルキオン公国って、ほんとに色んなことしてるんだね」
ぼくのは自称ではないけど、『断鎖のドレイク』も認定されていない異名ってわけかぁ。
「世界中から選定された戦士、学者、発明家、治癒士に呪術師まで、あらゆる分野で認められた人がこの辞典に載ってるってわけ。でもまぁ、一番多いのはやっぱり戦士かな」
なるほど。そう聞くと、途端に見え方が変わってくる。どの人も、みんなすごそうな人に見えてしまう。
そして、人物に関する項目の中で一際輝く『ある文字』に目が止まった。
「ねぇ、プリ姉。この『B』って書いてるのは何?」
「あぁ、それ? それはその人のランクだね。D〜S級で区分されてるんだ。まぁ異名持ちにD級はいないけど」
「へぇ〜。でも、この人も異名持ちなのにB級なんだ?」
「そのランクは総合力を表してるからね。武力、知力、技巧、人間的魅力や魔力量まで、あらゆる情報を加味して評価してるから、頭がいいだけじゃランクは低くなるんだよぉ」
ぼくが今見ているページの人は、どうも動物学者のようだ。つまり、知力や魅力には優れてるけど他が凡庸だからこのランクってことなのかな。
「だからA級やS級は滅多にいない。公認を受けた異名認定士が、きっちり調査するからね」
「異名認定士?」
「そそ。あらゆる環境で調査を行うために、洞察力や判断力、知能や運動性を測る厳しい試験を突破して、やっと得られる資格なんだ! くっふっふ、そしてぇ〜〜」
長いタメの後、プリ姉が懐から取り出したのは、光り輝く小さなバッジだった。
「何を隠そう、アタイも認定士の資格を持っているのさぁ!」
「おぉ〜」
祝福の意を込めて拍手をしておく。
バッジと共にプリ姉も光り輝き、後光が差している。
「ってことは、プリ姉が認定した異名持ちも載ってるってこと?」
「くっふっふ、そういうことだよぉ。まぁ認定したのは、まだ一人だけなんだけどね。アタイって認定士の最年少レコード持ちだしぃ〜、経験も浅いしぃ〜」
「わぁ、すごいすごい! どの人なの?」
ページをめくろうとするぼくを手で制し、プリ姉は鼻を高くしながら笑みを浮かべている。なんだかとても嬉しそうだ。
「見たい? 見たいよねぇ〜。でもその前に……」
プリ姉が指さしたのは、動物学者のランクを表す『B』の文字だった。
「異名認定士として、より優れたランクの人物を認定することが最大の誉れ。だから認定士は、埋もれた優秀な人材を見つけることを目標にしてるんだよぉ」
「より高いランクの人を、認定できた方がいいってこと?」
「そういうこと。S級を認定した日にゃ、エルキオン公国ではお祭り騒ぎで英雄扱いされちゃうよぉ。異名持ちを特集してる雑誌も爆売れするからね。ボーナスもすんごいの」
S級って凄いんだなぁ。
でも、今までのプリ姉の口ぶりからすると……
「もしかして、プリ姉はS級を認定したの?」
「……ふっ」
ぼくの問いに、プリ姉は目を閉じ静かに微笑んだ。
やっぱりそうなんだ!
「ドレーくん。人間ってのは凄いものでね、日に日に進化してる。5段階で設定されたランクだけど、その枠組みでは収まらない人たちが出て来たんだよぉ」
「もっとすごい人たちがいるってこと?」
「そう! それが【
うん、分かりやすい。
……表現はともかく。
「認定の為には調査が必要。調査の為には交流が必要。でも、規格外の化け物との交流は困難を極めるッ。 そこでこそ! 認定士の腕が試されるってわけだね」
あ〜、なんとなくだけど想像できる。偏屈な人が多そうな印象があるもんなぁ。
あなたのこと調べさせて! とか言ったら、激昂して来る人もいたりして。
「アリアス誕生から500年。その長い歴史の中で、認定されたSS級は10人足らず。SSS級はたった1人だけ……くっふっふ。それでね!」
満面の笑みでページをめくっていく。本当に嬉しそうだ。
プリ姉によって開かれたページ……そこには一人の少女が載っていた。
褐色の肌に赤い瞳、白と黒の三つ編みが特徴的だ。
可愛らしくもどこか威圧的で……優しそうだけどなんだか怖い……ぼくがその少女に抱いた印象は、そんな感じだった。
「【死の翠星 ルジーラ】──ランクは……SSS級!!」
たった1人しかいないSSS級が、まさかミレイアと同じ年齢くらいの少女だなんて。
驚くぼくを見て、プリ姉は更に機嫌を良くしている。
ま、まさか──ッ!?
「そう、この子がアタイの親友ルジーちゃん! アタイが認定した、世界でただ一人の
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