第6話 カスメ占領する
結局カスメ城下町に、たどり着くのに2日もかかってしまいおった。
カスメの住民達が、噂を聞いて続々合流して来おって、千人とも2千人とも数え切れない大集団の進軍になったからじゃ。
食糧じゃが、わしには犬コロどもが獣を狩って来る、角の生えた猪のようなものを、5頭がそれぞれ狩って来おる、こんなに喰えるか!
股肉を少し切り取り、残りは犬コロに「えっ?喰って来た?」
軽トラ並の大猪5頭も喰えるか! しょうが無いので14人のカスメ兵にやった。
見ておると、感心な事に大勢の住民に「姫様が皆に下さった!」
と言いながら肉を配っておった。
住民はわしの方を拝んでおった。
「ふん! 食い残しを呉れてやっただけじゃ」
別に勝手について来る者どもに、考慮してやる気は更々無いぞ、まっ、世紀の見物! 見物人は多い方が、わしの乗りが良くなるからの。
カスメ砦の
流石犬コロ、しっかり序列が有るようじゃ、コロに寄り添うように頭1つ下がってペスが並走、他の犬コロは身体1つ下がって、ヤンニントンとついて来ておる。
(わしが名前を付けた順で序列がついたか?)
城下町の住民は、何事かと、少し遅れてついて来る、大集団に聞いておる。
あの学者風の男が要領よく、かい摘まんで演説しておる様子。
3割と聞こえた途端に「おーーーっ」「うぉーーーっ!」あちこちから歓声が上がっておる。
あの者の名を聞いて居らんな、有能な者は今後に必要じゃ!
ちかくで眺めておる村娘にダメ元で「あの学者風の男の名前、知ってる?」と聞くと、結構有名人だそうで「賢者テレス様です、姫様」と教えてくれた。
「テレスさんね! 有り難う」
今わしは、城壁に囲まれたカスメ城を見上げて居る。
近くで見ると、更に荘厳で見惚れる美しさじゃ!!
目の前の城は、鵜城とか白鷺城のような和風の城で無く、ヨーロッパ風の堅牢な石組の城だ。
石組された城壁は、白い漆喰で化粧され、所々の黒が全体を引き締めた美しい佇まいじゃ。
今のカスメ領主はカスブタじゃが、遥か前のご先祖が素晴らしい人だったようだ。
14人のカスメ兵、便宜上わしが指揮官に任命したのがヘンリー、副官がサンダー。
ヘンリーを少尉にサンダーを軍曹に昇進させてやった。
兵どももバカではない、誰に付いて行くと得か、誰に仕えるべきか、よう解っとる!
経緯は兎も角、今では便利なわしの私兵に成りおった。
門の前でヘンリーが大音声を上げた。
「マンバ姫様のお通りである! 開門!!」
声の迫力か、わしを捕らえて来たと、勘違いしてか、即座に正面正門が開いた。
門番4人はヘンリー達が制圧、経ち処に拘束された。
「門を閉鎖してこの場を死守!! 城内に余計な兵を入れるな!」
城下の兵舎からの増援を阻止すれば、城内常駐の近衛兵は数十名、50名は居ない。
(広い城内とは言え、コロどころか一番小柄なペスでも、狭くて自由に通れんな、無理して入っても身動き取れんようになっては、わしの邪魔になる)
「コロ、お前達はこの場で待て」「ウォン!!」
「大丈夫じゃちょっと暴れてすぐ帰る」「ブォン」
わしは、単身城の大袈裟な扉を潜り、エントランスにたどり着く。
見上げると、遥か上まで吹き抜けになっておる、勿体無い、天井を付けたら何部屋も広い部屋が出来るのに。
700年以上前の百姓家、あばら家と比べてしまった。
近衛兵20人わらわら現れよった。
「良い所に現れた、カスメ領主の所へ案内せよ!!」
捕らえて来たはずのマンバ姫が、脅えもせず堂々としている、違和感を感じながらも、無害そうな幼女故、近衛隊長は領主の間に先導してゆくのだった。
無害所か凶暴な化け物とは、マンバの容姿からは誰一人想像すら出来ないであろう。
「おうっそうじゃ! 奥方とトルダ殿は何処に居られる?」
「ルノ様とトルダ様、弟君のトレー様もご一緒に居られます」
「そうか、皆一緒とな……」
(好都合一気に大掃除できる!! コロ達を置いて来て正解じゃった、この通路は通れんわ)
近衛隊長が扉を開け「どうぞお入り下さい」
「案内御苦労!」
わしは、ずかずか入って行く。
(うわぁ豚が4匹! 餌を喰らってる!!)
昼飯時だったか。
「マンバ姫、良く来た! 早速トルダと婚礼の準備をせよ!!」
ぐちゃぐちゃ咀嚼しながらしゃべるな!
「トルダとかは、何処に居る? まさかそこのブタでは有るまいな!」
「ブ、ブタだとぉ! ふざけるな小娘!」
「なんと品の無い娘だこと」
「マンバァ身分をわきまえろ!!!」
「僕が
「豚が4匹ブウブウ騒がしい事じゃ」
「取り合えずこれは返す!」
生首3個食卓に放り投げてやった。
「「「「ひっィ!!!!!」」」」
「カスメのブタども! 我が家族を殺めようとした報い、貴様らの命で償ってもらう!!」
さっと駆け寄り、偉そうにふんぞりかえる、親豚を一匹窓からほうり投げた。
「ぎゃーーーーーっ」
「豚が耳障りに鳴きよる」
あまりの出来事に、状況が判断出来ず、固まった残りも窓から順にほうり投げた。
短い悲鳴が3度きこえた後、ドンと鈍い音にかわり、静になった。
「大掃除終り!」
作業が全て終了した頃になって、やっと騒ぎを聞き付け近衛兵が入って来た。
「近衛兵、今日ただ今を持って、私がカスメを統治する、不平のある者は意見を聞いてやる! 誰でも連れて来い!」
唖然とする近衛兵、見た目可愛いだけの幼女が、何か偉そうに命令するものだから、反発よりもあきれて居ると言った所か?
「近衛隊長! 君はゴミどもの犯罪行為を知ってるな! 因みにクロノ領は安泰だ! 両親も兄も健在じゃ」
「……」
「クロノ家が報復の総攻撃すると、互いに被害が出るであろう? 勿論勝利するのはクロノ家じゃが、被害を最小限に抑える為、私が単身解決に出向いて来たのだ!! 近衛兵になれた諸君は優秀なはず! 良く考えろ、どう行動するべきか!!」
勢いで畳み掛ける。
「不承不承でも様子見でも構わん! 動け!! 行動しながら考えろ!! そこの近衛兵3人、下に落ちたゴミを掃除しておけ! 近衛隊長とそこの2人、宝物庫に案内せよ」
「宝物庫……でありますか?」
「カスメ領主達を見て思う、どさくさに紛れ善からぬ事、ぶっちゃけ金目の物を盗む奴が現れそうじゃ!!」
(雰囲気と言い、命令指示行動を見るに、この姫様は只者では無いな、行動しながら考えろか……よし!! 資質を見せて貰いますよ、マンバ姫様)
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