第3話 考察2・・教育ママでは解決しない
ここで、もう一度、事例を見てみましょう。ただし、あなたは相談を受ける立場ですから、事例の主語は『あなた』から『友人』に変えています。
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友人の母親が、ものすごく周りを気にする人で・・周りのお母さんに勝ちたいという一心から・・友人のテストの点数を必要以上に気にしています。その結果、母親は「勉強しなさい」、「勉強しなさい」と声を荒げて、友人に勉強をしつこく強要してきます。友人は、そんな母親の圧力に耐えかねて・・とうとう、心の病に陥ってしまいます。
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ここで、問題になるのは、『友人の母親が、ものすごく周りを気にする人で・・周りのお母さんに勝ちたいという一心から』友人に勉強を強要する・・という点になります。
一方、先ほどの『教育ママ』の一般的なイメージは以下のようなものでした。
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〔教育ママの一般的なイメージ〕
子どもをいい学校に行かせたいとか、高収入を得させたいといった・・子どもの未来をもっと良いものにしたいという思いから、子どもに勉強を強要したり、勉強のスケジュールを管理したりする母親。
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つまり、『教育ママ』の場合は、まず『子どもの未来をもっと良いものにしたい』という思いがあって、それで勉強を強要するというものでした。
如何ですか?
事例の『友人の母親が、ものすごく周りを気にする人で・・周りのお母さんに勝ちたいという一心から』あなたに勉強を強要する・・とは全く違いますよね。
実はこの事例の場合は、友人の母親には『自己愛性パーソナリティ障害』といった精神疾患の可能性が大いに考えられるのです。
これはどういった疾患なのでしょうか。ネットから引用してみましょう。
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自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害とは、自身の能力などに対する自己評価が過剰に高く、他者から賞賛されたいという欲求が強いにもかかわらず、他者への心情などに共感する能力が欠如している精神疾患です。
パーソナリティ障害は考え方や行動が大多数の人と異なるため、自身や周囲の人が“生きにくさ”を感じる病気の総称です。自己愛性パーソナリティ障害もその1つで、際限ない成功や美しさの空想を持ち、自身を称賛する人物には特別に親しい関わりを求め、それ以外の人物には評価を不当に低くして優越感を維持しようとします。 また、他者からの批判や失敗に非常に敏感で、他者にいわれのない反撃をすることも少なくありません。そのため、周囲の人との円滑な人間関係の構築が困難となります。
(「Medical Note」より)
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友人の母親が『自己愛性パーソナリティ障害』といった精神的な疾患かどうかについては、専門家の診断に任さなければなりませんが・・実は、この事例では母親がそういった精神疾患と判定されるか否かは大きな問題ではないのです。精神疾患と判定されなくても、そういった精神疾患的な傾向を持って、子どもを苦しめているということが問題なのです。
友人の母親が『自己愛性パーソナリティ障害』である場合や、そうでなくても、その気質を強く持っている場合には、『(子どもを含めた)自己が他人より優れている』状況を得ようとします。ここで、『優れている』ものは、勉強の成績だけでなく、運動能力や楽器を演奏する能力でも何でもいいのですが・・たまたまその矛先が勉強に向かった場合、この事例のような状況が発生するわけです。そして、この場合、母親は『子どもの未来をもっと良いものにしたい』といった論理的思考ではなく、病的気質から、なかば本能的に勉強を強要してくるのです。
つまり、先ほどの『教育ママ』の一般的なケースとは全く異なる状況で、あなたの友人は苦しんでいるのです。
従って、相談を受けたあなたが『教育ママ』のイメージを元に、友人にアドバイスを送ったとするとどうなるでしょうか?
例えば、先ほどのBのアドバイス、「お母さんに、あまりしつこく勉強、勉強と言わないでくれと頼んだらいいじゃないか」をあなたが友人に言ったとします。
でも、友人の母親は、そういった論理ではなく、『自己愛性パーソナリティ障害』の気質から、なかば本能的に行動しているのです。ですから、友人がそんな母親に「勉強、勉強と言わないでくれ」と言ったところで、母親が『勉強を強要する』という行為をやめるわけはないのです。
それどころか、先ほどのネットの記載にあるように、この気質は『他者への心情などに共感する能力が欠如している』ことから、友人の母親が「自分の強要がまだ足りない」と思って、友人にさらに勉強を強要することも考えられるのです。
こうして、友人は悩みを解決するどころか、ますます苦しむことになってしまいます。
まさに、『はじめに』の章で書いたように、友人からすると『心の悩みを誰かに聞いてもらいたいのに、話しても誰も理解してくれない・・』という状況に陥ってしまうというわけです。
でも、あなたは真剣に友人の話を聞いて、理解して、アドバイスを送ったつもりなのに・・どうして、こんなことになってしまうのでしょうか?
この原因について、さらに深掘りをしてみましょう。
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