第3話 わたくしは、この国を出て行きますわ。

はコックス王子に、向き直りましたわ。


これで分かって頂けたでしょう。


このようなお馬鹿様な王太子のいる国に嫁ぎたくないことを。


「では、ロゼッタ王女。日を改めて婚約の発表を。」


あら、あら。予想以上のお馬鹿様な方でしたわ。


もう完全に婚姻等御免被りますわ。


ここははっきりと言わなければ分かって貰えなさそうですわ。


仕方がありません、余り事を荒立てたくは無いのですが。


「ご遠慮致しますわ。」

「遠慮しなくてもよいぞ。

そうだ、私とストロベリーとの正式な婚約の発表の時に同じく二人の発表をしよう。」

「それはいい考えですわ、パテシエさま。」


何を言っているのでしょうか? このお馬鹿様たちは。


わたくしとの婚姻は国と国との結びつき、お座なりに婚約など出来る訳がないことが分からないのでしょうか? 


下手をすれば戦になる可能性もありますのよ。


ほんとうに、この国の王子教育はどうなっているのでしょう。


ああ、嫌ですわ。

こんなお馬鹿様の王太子がいる国など、早く祖国に帰りたいですわ。


「ロゼッタ王女。それで機嫌を直しておくれ。」


ああ、お馬鹿様がもう一人。


わたくし、こんなお馬鹿様と婚姻をしようとしていたのですね。


ここははっきり言わないと。

いえ、既にはっきり婚約はお断りしたはずですわ。


はっきり理由を言わなくては、このお馬鹿様には伝わらないのでしょう。


「婚約はお断り致しますわ。」


わたくしは、はっきり言いますわ。


「理由は、国がお決めになった婚姻を簡単に破棄してしまう方が王太子でいる事ですわ。」


理由も、はっきり言いましたわ。


「なに!! ではロゼッタ王女は虐めや、人を傷付ける者を国母にしろと言うのか!? 」


大きな声を出さないで頂きたいですわ。王太子としてもう少し冷静でいて欲しいですわ。


「命があるだけで、宜しゅう御座いましたね。」

「なに!! 」

「わたくしの国なら、命はありませんでしたわ。」


ええ、そうですとも色恋に現を抜かすお馬鹿様は国を思う忠臣に殺されていますわ、国では。


「貴様の国は、ストロベリーを殺すと言うのか!! 」

「違いますわ、殺すとすれば王太子ですわ。」


わたくしは、はっきり言います。


「お兄様が色恋に現を抜かすというのなら、お父様が排斥になさるか国を思う忠臣に殺されていますわ。」


当然で御座いますわ。

国と王太子、どちらか選ばなくてはならないのなら国を選ぶ筈ですわ。


国が傾けば多くの民が困り、周りの国が戦を仕掛けてくるかも知れませんもの。


王太子の代わりなら他にもいますもの。


「この国には、忠臣はおられないのですか? 王太子が無理なら、籠絡する者を葬り去る忠臣の者は。」


いませんわよね、先程も進言する方はおられなかったんですもの。


「将来国王となられる方がを破棄なさる方を、国を、わたくし信用する事は出来ませんわ。」


ええ、同盟関係を簡単に変えられては困りますもの。


それも色恋だたで、国の存亡を決められたらたまったものではありませんわ。


ああ、もう少し早く思い出していれば婚約の発表前まで来なかったのに。


でも、助かりましたわ婚約発表の前で。


「マロン・グラッセ公爵令嬢。」


わたくしは、茫然と立ち尽くしている公爵令嬢に声をかけましたわ。


「はい…… 」

「あなたは、まだ王太子に未練がおありなの? 」


彼女はお馬鹿様な二人を見て、頭を振りましたわ。


そうでしょう。

ここまでされては百年の恋も冷めますわよね。


わたくしは、事を恥ずかしく思っておりますわ。


「あなたは、国外追放を言い渡されましたわね。」

「はい。」

「わたくしの国に来るといいでしょう。わたくしの客人として。」


あなたのお陰で、この国に嫁がなくて済んだのですもの。


「ではみな様、わたくしはこの国を出て行きますわ。」





           【完】



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