文武両道で生きるのが上手い星野優華。対して才能もなく性格も暗い香住透。
幼い頃に優華に助けてもらったことのある透は、成長するにつれ、開いていく彼女との距離や、彼女に憧れ、妬む気持ちに苦しむようになります。同時に、彼女になって、彼女の努力や感情のすべてを知りたいと強烈に感じる透。
人は公平には生まれないという悟り、持てる者への羨望、自分への諦め。相反する気持ちに引き裂かれる透の心情が、間近なものとして、はっとするほど鮮明な言葉で語られます。その鮮明さによって、読む者に浮き沈みの多かった若い日々をリアルに思い起こさせます。
瑞々しい文体というのはこういう文を言うのだと、この作品を読んで初めて思いました。瑞々しく、美しい中にも激しさが垣間見える、心をぐっと掴まれる作品です。