第11話 村人B、最高傑作との邂逅
《終焉ノ坩堝》──それは、世界の東端に位置する灼熱の火山地帯。その名の通り、過去に数多の兵器と技術が「封じられ、沈められた」場所である。
深紅の岩肌を踏みしめ、ロウたちはその内部へと足を進めていた。
「ここが……“鍛冶神”が眠る場所……」
エリナの声が震える。剣士である彼女でさえ、本能で感じる。ここが“常識”の届かない領域であることを。
空気に漂うのは、灼熱と魔力の気流。そして、ただならぬ“呼吸”のような重圧。
「まだだ。……だが、動いてる」
ロウが鋭い目で先を見据える。彼にとって、ここはかつて何度も通った“工房”の跡地だった。
「ロウ。あれが……?」
クラウスが指差した先、黒煙の中に、ゆっくりと姿を現す影があった。
全長5メートルを超える重装の構造体。多重関節のアーム、魔核炉を三基内蔵し、全身に刻まれた魔術回路が妖しく輝く。
それは、ロウがかつて最も恐れ、封じた存在──
《試作型・神滅装ヴァナルガンド》
「……これは、俺が初めて“人を滅ぼせる”と確信した機体だ」
ロウの声に、珍しく迷いが混じっていた。
「制御できなかった。力だけは神を凌ぐ。だが、使い手を喰う。魂ごと焼き尽くすんだ」
その瞬間、ヴァナルガンドが動いた。
轟音とともに右腕の砲が展開され、灼熱の魔力弾が空間を焼き裂く。
「来るぞッ!」
ロウが即座に叫び、仲間たちが散開する。
「エリナ、クラウス、足を止めるな! あれは“殺すつもりで作った”兵器だ!」
――バァンッ!!
魔力弾が着弾し、地面が抉れ、火花が弾け飛ぶ。
クラウスが反射的に剣を構えたが、ロウが叫ぶ。
「斬るな! あれは“武器で壊せる構造”じゃない!」
「じゃあ、どうすりゃいい!?」
「俺が止める。……そのために“アトロポス”を連れてきた」
そう言って、ロウは腰の装置を起動する。
ガギン、と金属音が響いた次の瞬間──
彼の背中に、蒼銀と黒の魔装機構が展開される。
《神滅装アトロポス》──ロウの“真の力”が、現界する。
「──第一制限、解除。出力、三十パーセント」
その声は低く、だが確かな力を帯びていた。
灼熱の坩堝で、《創鋼の熾火》の罪の結晶と、その継承者が激突する。
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