第7話
9階??
転移した瞬間。
すぐに頭で理解できず立ち尽くす。
転移ボタンを間違えたのか。
アイツらは。
見渡したが4人の姿は無い。
見える範囲に戦闘の跡もない。
地下9階。
それがどのようなものか俺には想像すらつかない。
だが転移する瞬間の恐怖に覆われたメリッサの顔が脳裏に焼き付いている。
それほど危険な場所なのか。
脳が理解すると同時に寒気を覚える。
ここに留まってはいられない。
この深部で魔物と遭遇する事はすなわち死だ。
足音を消して気配を探りつつ慎重に移動し始めながら
荷物を震える手で探る。
あった。
マップだ。
だが地下9階は極深部にあたり、俺たち一般冒険者にとって未探索扱いであり情報など皆無となる。
転移後の地点と帰還転移陣の大まかな位置しか書かれていなかった。
これでは正確なルートがわからない。
絶望と極度の緊張から汗が滴り落ちる。
進むしかない。
空間そのものが異様な圧力となって身体を圧迫する感覚。
まるで粘い液体の中を歩いているようだ。
恐らくは各所にいる強力な魔物の妖気であろうか。
地下4階とは全く世界が違う。
その時。
ペタペタペタペタ
何か気味の悪い音が聞こえた。
ペタペタペタペタ
後ろだ。
何かが近づいてくる。
赤いバンダナ・・テオだ!
そう思ったのもつかの間。
バンダナを付けてるであろう頭の位置がやけに低い。
これはテオではない。
姿を見た瞬間俺は絶叫した。
うわあああああああああ
絶叫と同時にがむしゃらに飛び出し逃げる。
完全に死を予感した本能としての動き。
反対方向へ。
あれはテオだったものだ。
まずい。まずい。
荷物などいつ捨てたかすら覚えていない。
ハァハァハァ
とにかく走る。走る。走る。
ハァハァハァ
途中グチャグチャに丸められた金属の鎧らしき塊が見えた。
ハァハァハァ
その奥の壁にめり込んだ紫色のモノはなんだ。
思考するのを拒否している。
ハァハァハァ
草色の司祭服が細切れになって通路に散乱していた。
その近くに巨大な膨らんだ何かが転がっている。
かすれた声にならない音を出しながらよろけつつ俺は進む。
見えた。
転移魔法陣だ。
思うように動かない足をなんとか動かしそちらの方へ。
ペタペタペタペタ
できるだけ速く進んでいるのに。
ペタペタペタペタ
アレが近づいて来ている。
頭が真っ白になるほどの恐怖を襲われ足がガクガク震えだす。
最後の力を振り絞り転移魔法陣の中へ倒れこむ。
視界が揺らぎ、意識が遠くなるのと同時に清浄な空気に包まれるのをかすかに感じた。
ピィーピィー
大型のムームーが空を舞う。
意識を取り戻した俺は、
管理人に呼ばれた衛兵らの取り調べを受け、
パーティ壊滅の報告の為拘束されていた。
魔法陣の誤作動による事故って事で収まり
状況説明を終え解放された俺は帰路に着く。
1人で。
すでに日が落ちかけた街道を歩く。
普段通りの行き交う人々。
その中で俺は。
ピィー
ムームーの鳴き声に足を止めて振り返る。
夕暮れに染まった空の中に。
銅貨色の夕日が浮かんでいた。
銅貨物語 完
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本日の収支
収入
・なし
支出
・朝飯 銅貨1枚
収支 銅貨-1枚
所持金 銅貨1枚
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銅貨物語 RYO @ryoryoryoryoryo2007
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