授業を挟んで、次の休み時間になった。

「ん?」

 己の席にいた真は、浩子が廊下から自分に手招きをしているのに気がついた。それで、彼女のもとへ足を運んだ。

「どしたの?」

「新聞の記事のネタとして、どうかなってものを一つ思いついてさ。少し前に、一組に転入してきたコがいるの、知ってるでしょ?」

「ああ」

 真はうなずいた。

「でも、男子ってだけで、顔も名前もわかんねえけど」

 真が籍を置いているのは三組で、浩子は四組である。

「大場くんっていうんだけど、なんか面白いらしいの。インタビューって感じで話をして、それを書けば?」

「へー、そんなにひょうきんな奴なのか」

「いや、面白いって、そういうのじゃなくて、興味深い人ってこと。なんでも、転校してきたばかりだから何もやらなくていいのに、希望して保健委員になったうえに、自主的によく保健室に行って、具合の悪いコには関係する健康の情報を教えてあげたり、気分が落ち込んでいるコには何も言わずにしゃべりたいことに耳を傾けてあげたり、すごくよく仕事をして、それも的確な働きぶりだから、先生にも、関わった生徒にも、評判がいいらしいんだ。養護の先生が、『こんなに率先して、しかも立派に仕事をするコは初めて』って、驚いてるくらいなんだって」

「……ふーん」

 熱心に説明した浩子に対し、真のリアクションは薄い。

「俺的にはひょうきんな奴のほうがよかったけど……でも、まあ、あんがと。明日の朝イチで提出することにしたから、もう少しネタを探すかもしれないし、それにするかはわかんねえけど、助かったよ」

「頑張ってね。あんまり高山さんに迷惑をかけないのよ」

「プッ」

 真は笑顔になって吹きだした。

「何だよ。俺の母ちゃんかよ」

「だって……」

 心配顔の浩子は、本当に彼の母親のようだ。

「わーった。ちゃんとやるよ」

 なんだか照れくさくなり、真は大げさにバイバイと手を振って、席に戻っていったのだった。

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独裁者 柿井優嬉 @kakiiyuki

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