第44話 封絶ノ王と解錠師。
★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
【──馬鹿なッ!? なぜ、なぜ貴様がここにいるのだ!? エグゾードッ!!】
ロックではなく、かつて世界を震撼させた最強最悪の魔王、
数十年前に起きた「人魔大戦」において、絶対的な存在として君臨していた魔王。
勇者がエグゾード、その他の
「おい、さっきからうるさいぞダークネス。何をそこまで驚く必要がある?」
【これが驚かずにいられるかッ!! 私が貴様の魔力を
「勇者との戦いで、『魂そのものを封印されたから』か?」
エグゾードの問いに対し、ダークネスは動揺を隠しきれなかった。
「まぁ、あのとき勇者と対峙していたのは俺だけだからな。アイザとペロコの二人は、俺の個人的な戦争に関わらせたくなかったんでな、戦いには参加させなかった。──だがお前は、この混乱に乗じて俺を殺そうとしていた。そうだろう?」
【ッ!? なぜそれを……!】
「おい……おいッ! ちょっと待てよ! さっきからこの俺様を差し置いてなんの話をしてやがる!?」
睨み合うエグゾードとダークネスのあいだに、「魔力循環装置」として使われていることに気付いていない
「ロック! お前なんで生きてんだよ!! 今の攻撃で死んだんじゃねーのかよ!?」
エグゾードの
だがその魔力はガレスのものではなくダークネス自身のものであり、ガレスの肉体を「媒介」にしているだけで自我を乗っ取っているワケではない。
【おい! やめろガレス! 何をしている! エグゾードを前に無駄な魔力を消費させるな!!】
「うるせえ!!
【こ、コイツ……!!】
──失った肉体を新たに得るため、ガレスという肉の器を手に入れた……そう考えていたダークネスだったが、ガレスの意思は無駄に強く、彼の自我を完全に乗っ取ることができなかった。
それを目の当たりにしたエグゾードは、心底バカにするように鼻で
「ク、ククク……! フハハハハハハハ!! 【
【くッ……!】
ダークネスは、自身の肉体が正常に形成できないことを見抜かれて閉口する。
エグゾードが言った通り、ダークネスは人魔大戦時に混乱に乗じてエグゾードを殺害しようとしていた。
しかし、ダークネスの策は成功することはなかった。
エグゾードと戦いを繰り広げていた勇者は、「この世から消すべき
激化する
そんな中、エグゾードが窮地に陥った際、自らの手柄にしようとしたダークネスがトドメを刺そうとエグゾードへと級接近するが、それを許す勇者ではなかった。
エグゾードへと攻撃しようとした瞬間、ダークネスは勇者の『光属性魔法』による一撃を受けてしまい、逆にダークネスは肉体を全壊するほどのダメージを負った。
しかし、ダークネスは『闇』そのもの。
世界中に闇が溢れているため、彼は絶命することなく、なんとか一命を取り留めることができた。
だが勇者の一撃により損傷した肉体を再生するほどの力も残されておらず……。
最終的に、エグゾードを殺しきれないと判断した勇者が自らの命を代償に、エグゾード含む4体もの
だが、話はそこで終わらなかった。
「──ダークネス。不思議に思っているだろうから教えてやろう。俺がなぜ『魂を封印されたのにこうしてこの世界に存在しているのか』。そしてなぜ『俺の魔力を感知できなかったのか』」
エグゾードの質問に対し、ダークネスだけでなくアイザ、そしてエリスも顔色を変えた。
アイザもずっと気になっていた。
同じ
「単純な話さ。俺が勇者の『封印魔法』を受ける前に、俺が俺自身の魂──
「……自らの記憶を、封印したじゃと?」
アイザの声に、エグゾードはゆっくりと頷く。
「俺の持つ魔力と魔法。全ては俺の『
封絶。
それはありとあらゆる事象を、自らの意思で封じ込めることができる最強の封印術。
彼が封じ込めたいと想像した対象物を、問答無用で封印させる──因果すらも捻じ曲げる究極の絶技であった。
勇者が彼を倒せなかったのは、純粋な戦闘能力だけでなくエグゾードの持つ【封絶】の力が大きく関わっている。
勇者の放つ魔法が、スキルが、剣技が。
その全てを「無」へと変換するエグゾードを前に、勇者は手も足も出せなかったのだ。
「……ということは、アナタは『魂』を勇者様に封印される前に、
ガレス同様、体を拘束されたエリスが溢した。
エグゾードは「その通りだ」と言うと、エリスにかけていた
「とは言え。勇者が発動した決死の『封印魔法』は、この俺の力を持ってしてでも完全に防ぎ切ることはできなかったがな。流石は世界に認められし勇者と言ったところか」
「……待て。もしその話が本当じゃとして、我やペロコがお主に気付けなかった理由にはならんじゃろう!?」
これまで、「ロック」という少年と接してきたつもりだった。
だがその正体が、長年ともに歩んできた親友だなんて──アイザは、これっぽっちも考えなかった。
顔の雰囲気は、今となれば似ている気がする。
だが決定的に違うのは「魔力」だ。
ロックの魔力とエグゾードの魔力は、放つ際に灯る色、質や量もまるで違うのだから。
「ああ、そのことか。それも単純な話さ。俺がお前たちの
「……まぁ、それでも
エグゾードから明かされる真実に、アイザは言葉を失ってしまう。
自分と同じく「封印が解かれてどこかで暮らしている」と勝手に思っていた。
だがまさか、自分を救ってくれたと思っていた解錠師が、かつての友だったとは──。
そこでアイザは、ふとした疑問を抱く。
「……ロックは、ロックはどうなるのじゃ?」
「ッ、そうですわ!! ロック様はどうなるんですの!?」
二人の問いに、エグゾードは興味のない表情で告げる。
「
「そ、そんな……!!」
エグゾードの言葉に、エリスは膝をつく。
アイザは、これまでともにしてきたロックを失ったこと、その逆にかつての友が現れたことに混乱していた。
「いやですわ……! ロック様を返してくださいまし!」
「何をワケのわからないことを……まぁいい。とりあえず邪魔者を先に排除するか」
エグゾードは面倒臭そうに呟くと、ふたたびエリスに
「ロックから引き継いだ記憶によれば──俺のことを散々な扱いにしてくれたみたいだな? 今その恩を返してやろう。来い下郎。遊んでやる」
「クソが……舐めやがってええええええ!!!!」
ダークネスの魔力を一点に集中させ、ガレスはエグゾードに向けて『闇属性魔法』の上級魔法を発動させる。
「死ねロック!! 『アビスゲート』ォッ!!」
エグゾードの前に、巨大な黒い穴が展開される。
世界中の『闇』を凝縮させて深淵の扉を開く、『ダークネス』のような存在のみが使える最強魔法。
飲み込まれれば最後、二度とその深淵から出ることはできない。
エグゾードは、その魔法を目の当たりにしてもなお、余裕な表情を崩すこと無く、手のひらをそっとかざして呟いた。
「──【
「なッ!!?」
透明で巨大な
ガレスは魔力を込めて再度開こうとするも、その扉が開かれることはなかった。
「う、ウソだろ……? 俺が使える最強最大の魔法なのに……!!」
絶望に顔を歪めるガレス。
そんな彼の元へと歩み寄るエグゾード。
じゃり、じゃりと音を立てて近づいてくる
だがその全ては、エグゾードの放つ魔力の壁に遮られて届かない。
──死ぬ。このままでは殺される……!!
ガレスが感じた直後、エグゾードの足がふいに止まった。
「な、なんだ? 助かったのか……?」
「エグゾード、どうしたのじゃ!?」
「……バカな。まさかまだ、俺の魂と
自身の体を見下ろしながら、エグゾードは愕然とした顔で声を漏らした。
その直後、エグゾードは全身を【
──記憶を失った際に形成された、
「──そうだ。お前の好きにはさせないぞ、エグゾード……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます