後悔の先に

 「ごめん。」

 「まだ勇気出ない。」

 断られた。

 衝動的になってしまった。強引すぎた。威圧的だった。

 断られる理由なんていくらでも思いついた。

 今すぐにでも泣きたかった。でも堪えてなんて事ないよう装って、

 「そしたらさ、連絡先交換しようよ。」

 まだしてなかったから。

 こんな時にしたくなかったけど、ある意味今しか無かった。

 LIMOのQRコードを差し出す。

 彼も快く繋いでくれた。

 毎度の恒例イベント、よろしくスタンプを送って閉じる。よし。

 

 交換してからすぐに彼は帰ってしまった。気まずかったし、これでいい。

 彼を見送って部屋に戻る。

 

 

 あぁ、我慢してたものが溢れてくる…

 ダメだよ、泣くな私。

 けれど涙は止まらなかった。

 多分彼に嫌われた。終わった。私の恋はこんなことで終わってしまうのか…。

 自業自得だ、仕方ない…。

 

 ひとしきり泣いた。もう二十二時だった。

 もういいんだ嫌われてしまっても。今まで自分に甘く、自分の好きに過ごしてきた分、この想いくらい他人に、彼に委ねよう。

 

 寝れない。

 自分の行動一つ一つが鮮明に脳裏によぎる。やり直せるなら昨日丸々無かったことにしたいくらい全てが酷い。

 自分が怖い。もうなにもしたくない。自分がなにをするべきなのか、なにをしてしまうのかが、怖い。

 

 

 

 結局一睡も出来なかった。

 とても休みたいが今日はいかなきゃ。休んだら多分彼が気にしてしまうから。

 動かない体を無理やり起こして学校に走る。

 走りながら考える。

 まだ終わりたくない。彼とまだ話したい、一緒に居たい。

 どうしたら仲直り出来るだろうか。

 いや、もっと仲良くなるにはどうしたらいいだろうか。

 何処か行くのが一番じゃないか?

 でもどこに行くのがいいんだ?

 そんなことを考えていると、ふと通行人の話が聞こえた。

 「これだけ暑いと、八月の納涼祭が近く思えてくるわ…」

 そうだ。夏祭り!

 たまには別の人と行っても友達も怒らないだろうし、誘ってみようかな。

 そう決めて、ちょっとスキップ気味に走り出す。

 

 

 放課後。

 彼が図書室に入るのを確認してから向かう。

 入口で止まってしまう。

 怖い。

 嫌われたんじゃないか、もう会いたくないんじゃ、なんて想像が溢れて拘束する。

 泣きそうだ。

 泣きたくない。

 動けよ私!彼が待ってる!

 

 

 一旦離れてトイレに駆け込む。

 鏡で自分を見つめる。

 変わらなきゃ…なにか…

 そんな時髪の毛に目がいった。

 私ながら単純だ、いつも結っている髪を下ろしてみる。なんとなく外ではずっと結っていた。学校で下ろすのは初めてだ。

 これでいい、ちょこっとだけ心も変われた気がする。

 

 

 図書室前まで戻ってきた。

 よし!

 

 

 入ると彼がこちらをもう見ていた。

 目が合った。

 手を振りながら彼の元に近づく。

 彼の元に着いたタイミングで彼も立ち上がる。

 互いを正面に見る。

 なんだか気恥ずかしい。

 息を吸って。

 「「ごめん。」」

 え。

 今彼も謝った?

 なんで君が謝るの?なにも悪くないじゃないか。

 そんな目で彼を見ると、全く同じ目をしていた。

 改めて謝る。

 彼も改めて謝ってきた。

 嬉しかったんだ、良かったぁ。そんな安堵を感じた。

 その瞬間、涙が零れた。

 昨日、もう泣かないって決めたのにな…

 それに気づいた彼が介抱してくれて、収まるまで端っこの席で泣いていた。

 少し落ち着いてきた。

 その時つい口に出てしまった。

 「嫌い?」

 言うつもり無かった、これは出すべき言葉じゃないと分かってたはずだ。

 最悪だ、好きでもない人に嫌い?なんて聞かれたって迷惑だろうに。

 そんな後悔が渦巻く中、彼が即座に言った。

 「そんなわけないじゃないか、好きに決まってる。」

 え?

 彼を見ると、真っ直ぐな目でこちらを見ていた。

 いやきっとたぶん、「友達として」だろう。いや、それでも嬉しいけれど。

 本当に良かった…とりあえず私の恋はまだ次があるらしい。

 また少し涙が溢れてきた。

 しばらくして冷静になってきた。その時ふと言葉に出た。

 「「花火」」

 !?

 朝ふと思いついた、仲直りの方法。在り来りだけど、彼も口にするとは思わなかった。

 二人して顔を見合って思わず笑みが零れる。

 沢山笑った。

 笑いすぎて、涙も出た。でもこれは嬉しい涙。

 こういう涙を流したのはいつ振りだろうか。

 こんな涙が。こんな空間が。ずっと続けばいいのに。

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君と僕、私と君。そして宙。(仮) ハク @1nugara

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