郷土の偉人 正岡子規の本を見つけた「笑う子規」

Kojiro

第1話 全編

「笑う子規」正岡子規著 天野祐吉編


 今、ベトナム語の学習をしているのだが、どういう訳かテキストを読み始めると眠くなる。


 と言う訳で、手元にある本を開くと一気に頭が冴え、脳が活性化してくる。この不思議をどう説明して良いのかわからないが、本当に正直なものであり、情けなくもある。と言う訳で、この本のことを紹介する。


 この本は松山へ帰った折に見つけて購入した。言わずと知れた子規は俳人であり、短歌の革新者でもある郷土の偉人である。司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」でも秋山兄弟とともに紹介されている。


 この本はコラムニストの天野祐吉さんが編集をされている。俳句はおかしみの文芸であり、俳句の「俳」はおどけやたわむれと言う意味で、西洋でいうユーモアに近いらしい。


  柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺


 子規のこの句もおかしみの感情です。「柿を食べる」ことと「鐘が鳴る」ことの間には何の必然性もないし、気分の関連もない。しかしこの二つの間にははっきりしたズレがある。おかしみと言うものは、そんなズレから発生し、我々の気持ちを惹起し和ませるもののようである。


 同じ松山ゆかりの漱石にもこんな句がある。


 鐘つけば銀杏(ぎんなん)散るなり建長寺


 この句は子規より数か月前に作られたらしいが、やはりおかしみの点では子規の方に軍配が上がるようである。先ほどのズレという観点から見ても説明できるのかも知れない。


 子規は重い病と闘いながら34才の若さで亡くなった為、まじめな句が多いと思っているかも知れないが、生き生きした生気あふれる明るい句も多い。そしてこの本はそんな句をテーマに集めたものである。

 少し紹介したいと思う。


 元日や上野の森に去年(こぞ)の月………初日の出とともに西に大晦日の白い月が残っている


 緑子(みどりご)の凧(たこ)あげながらこけにけり………大空と小さな子供そしてこける姿がまた可愛い


 おそろしや石垣崩す猫の恋………猫の恋は激しく凄まじいが、石垣を崩すか?えっ?


 行水や美人住みける裏長屋………昔は、行水をする美人が見られたのです ハイ


 金持ちは涼しき家に住みにけり………今も昔も変わらない


 睾丸(こうがん)をのせて重たき団扇(うちわ)かな………読める通りで、ユーモアがある


 忍ぶれど夏瘦せにけれ我が恋は………ものや思うと人の問うまでか


 枝豆ヤ三寸飛ンデ口ニ入ル………一寸は約3cmだから、10cmを飛ばすらしい


 無精さや布団の中で足袋をぬぐ………今だと炬燵の中で靴下か


 うとましや世に長らえて冬の蠅………超高齢者時代、そうはなりたくない


 とまぁこんな感じがとても楽しい。直ぐに出来そうだがこうはいかない。



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