行ってきます

森の訓練所へ逃げのびた2人だったが、そこには食料と呼べるものは一切無く。


食料を探しに行けるほど明るい時間帯でもなかった。


2人は先程見た光景と生き物に怯えつつも一夜を明かすことになった。


だが、アリアはどう見ても眠れそうな状態には見えなかった。


それも当たり前だろう、なにせ目の前で両親が惨殺されたのだから。


少しでもアリアの気を紛れさせられるようにと、ルカはアリアの手を握った。


そうするとアリアは少し落ち着いたようで、少し震えながらも眠りについた。


翌朝起きると、まだ現実を受け止めきれてはいないものの少し元気を取り戻したアリアの姿がそこにはあった。


ルカ「アリア、もう起きてたの?」


アリア「うん、怖くても辛くても、ずっとここに居るわけにはいかないから」


ルカ「アリアは強いね、僕ならそんなすぐには立ち直れる気がしないよ」


アリア「ほら!ルカも起きて!もう一人も居ないかもしれないけど、村に生き残ってる人が居るか探しに行こ!」


ルカ「アリアは大丈夫なの?昨日あんなことがあったんだし、多分たくさん人も死んでるよ」


アリア「うん、まだ全然大丈夫じゃないし…死んでる人も出来れば見たくない…けど!


けど、私みたいに家族が殺された子がまだ居るかもしれないし、食べ物もないと生きていけないでしょ

だから…」


ルカ「アリア…分かったよ僕もついていく。


もし昨日の奴らが居ても僕がアリアを守る」


アリア「うん!その時はお願いね!私の【騎士様】」




~マリノ村跡~




生存者と食料を探すため2人は村に戻ってきた。


だが、そこはもう村と呼べるような状態ではなく、辺り一帯には濃い血生臭さと焦げ臭さが充満していた。


ルカ「昨日の変な生き物たちは居ないみたい…だね」


アリア「そうね…とりあえず生きてる人が居ないか捜してみよ」


ルカ「うん…分かった」


アリア・ルカ「誰かー!!生きてる人は居ませんかー!!もし居たら返事してくださーい!!」


何度もそう言いながら2人は村の中に生存者が居ないか捜した。


だが、1人も生存者は居なかった。


そして、生存者の代わりかのように体の一部を捕食されたような傷のある遺体がたくさんあったのだ。


2人は村人たちの遺体を1ヶ所に集め弔った。


もしみんなに来世があるなら平和な世で幸せに過ごして欲しい。と


2人は村人たちを弔った後村に残っている食料がないかを探した。


その結果見つかったのは厳しい冬を乗りきるためのパンや芋、干し肉を見つけた。


ルカ「良かった、食べられるものがまだ残ってて」


アリア「そうだね


数はそんなに多くはないけど、これだけあれば隣の村までは持つと思う」


路銀のため少し心は痛むが亡くなった村人たちの貯金を持ち2人は隣の村へ向けて出発した。




村への道中2人は少しでも明るい話をして、ネガティブに考えないようにしていた。


ルカ「ねえ、アリア…フツメ村に着いたら村長さんになんて説明しよう?」


アリア「そうね…見たことない生き物に襲われたって言っても信じてもらえないだろうしね」


ルカ「でもほんとに、何だったんだろうねあの人形のちっちゃい生き物達って」


アリア「何かは分からないけど、危険な生き物なのは間違いないと思う…実際私もルカが来てくれなかったらあそこで死んでたと思うし…」


そんな話をしながら、2人は歩き続けていた。


だが、フツメ村への道のりは長く日が暮れてきたため2人は野宿をすることにした。


マリノ村で狩人をしていた人のサバイバルグッズをいくつか持ってきていたため最低限寝ることはできた。


だが、ここは人の手の入っていない自然の真っ只中。


夜ともなれば野生動物達が活動する危険地帯になるのだ。


2人は焚き火をし、明日も生きていることを祈りながら眠った。


ルカは熟睡できず、真夜中に目が覚めた。


「ぅ…さん…かぁ…さん…」


と言う魘されている寝言が聞こえてきた。


やはりアリアも怖いのだ。


表面上はいくら強がったとしても、芯としては怖いことには変わらない。


その事に気づいてルカは少し安心した。


魘されているアリアの手を握り、ルカは「アリアは1人じゃない


俺が付いてる…だから安心して」と言った。


そうすると、アリアは落ち着いたのか、また静かに眠り始めた。


翌朝、2人は村から持ってきたパンを食べまたフツメ村に向かい歩き始めた。


3時間ほど歩き、2人はやっとフツメ村に着いた。


フツメ村の村人「おや、あんた達誰だい?この村の人では無さそうだけど」


アリア「私たちは隣のマリノ村から来ました。」


フツメ村の村人「おやまぁ!そうなのかい?何しに来たんだい?」


ルカ「僕たちの村が見たこともない生き物に襲われて…逃げてきたんです。」


フツメ村の村人「そうなのかい!?それは大変だったねえ


とりあえず村長の家まで案内してあげようか?」


アリア「案内していただけるのでしたら是非お願いします。あ!名前をまだ言ってませんでしたね。私はアリア、そしてこの人が」


ルカ「ルカと言います。」


フツメ村の村人「アリアちゃんにルカくんね!よろしく!あたしは【マーチ】って名前だよ」


ルカ・アリア「マーチさんよろしくお願いします。」


マーチ「さんなんて要らないよ!それじゃ村長の家に行こうか!」


ルカ・アリア「はい!」




~フツメ村村長の家~




マーチ「この2人マリノ村から来たみたいなんだけど、大変なことがあったらしくて話を聞いてあげてもらえない?ラング」


ラング「何があったんじゃ?お2人さん」


ルカ「一昨日見たこともない姿をした生き物達に村が襲われました。村人も僕たち以外全員…」


ラング「なるほど。それは大変じゃったな…それで、どんな見た目をしておった?」


ルカ「人のように2本の足で立ち、手で物を持った。小さな物達です。」


ラング「もしやそれは【ゴブリン】と言うものではないかな?」


アリア「ゴブリンとは何です?」


ラング「魔法によって生み出させるいわゆる魔獣と呼ばれる物の1種じゃ。背は低く、二足歩行で手に物を持ち、人や獣を襲うと言われている生物じゃ」


アリア「【魔法】とは何なんですか?」


ラング「魔法を知らぬか…では説明をしよう。魔法と言うのは、生まれつき魔力を感じ取れる体質の人のみが使うことの出来るものじゃ。じゃが、感じ取れるだけでは使えん。豊富な魔法の知識と永く厳しい鍛練をする必要がある。じゃからこの世界で魔法を使える者は、100人にも満たない。」


ルカ「そんな奴にうちの村は狙われたわけですか…」


ラング「普通の【魔導師】ならそんなことはしないが、数十年に1度【魔術師】が生まれる。その魔術師に襲われたのじゃろう」


アリア「魔導師と魔術師の違いって何なんですか?」


マーチ「魔導師ってのは人のために魔法を使う人の事。魔術師は自分のために魔法を使う人の事を言う」


ラング「だいたい何があったのか分かった。今日はこの村で休んでいくと良い。」


マーチ「うち酒場兼宿屋してるから泊まっていきな。お代は気にしないで良いから」


ルカ「本当ですか!?ありがとうございます!」


マーチ「部屋は別が良いかい?それとも同じ部屋にしとくかい?」


アリア「同じ部屋で…お願いします…」


マーチ「分かったよ!着いてきな!」

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