カレーは飲み物だったが、今日は固形
誰かの何かだったもの
朝起きたら、カレーだった
ベッドの上にカレーがかかっていた。理由はわからない。母が「今日からこの家はカレー主義なの」と言い残してバク転しながら台所へ消えていった。
僕の名前はポテト佐藤(15)。特技は「カレーを5秒で見抜くこと」だ。
学校へ行くと、全員がスプーンを持っていた。先生も黒板に「カレーとはなにか」とでっかく書いていた。
「先生、僕、今日は白米が食べたいです」
「出てけ!!」
僕は放課後までトイレ掃除を命じられた。理由は「カレーに反抗したから」らしい。便器の中にもカレーがいた。どうして。
帰り道、公園の砂場でひとりの少女がカレーを舐めていた。
「お嬢さん、カレーは飲み物ですよ」
「今日は固形がいいの」
固形!? その瞬間、脳がはじけた。
僕は悟った。これは陰謀だ。クチビル町のすべてのカレーが、液体から固形に進化しようとしている。つまり、食物ではなく、生命体なのだ。
家に帰ると、冷蔵庫に「逃げろ」のメモと、歩くカレーがいた。
「ワタシ、ナマエ、ククレ」
やばい。しゃべった。しかも市販っぽい名前。
「お前の目的はなんだ!?」
「世界ヲ、カレー色ニ、染メル」
終わった。
翌朝、クチビル町全体が茶色になっていた。大人も子供もみんなカレーをぶっかけながらスライディングしていた。正気なのは僕だけ。
僕は巨大スプーン(全長5m)を背負い、町の中心にある“カレースフィンクス”のもとへ走った。そこには全裸の市長が待っていた。
「カレーか、カレー以外か。それが問題だ」
「いや、お前は服を着ろ」
最終決戦。スプーン vs 市長(スパイスの化身)。
戦いの果てに、市長はカレーに溶け、町は元に戻った。人々は笑いながら「カレーって、やっぱ飲み物だよね」と言った。
僕は答えなかった。なぜなら——
次の日の給食はシチューだったからだ。
~完~
カレーは飲み物だったが、今日は固形 誰かの何かだったもの @kotamushi
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