書きたくなったよ!短編集!!
不定形
一個目 『稀代の悪女と呼ばれているわたくしではございますが』
私はマリーローズ・パスレティと申します。私達パスレティ公爵家の人間は、自分で言うのも恥ずかしいのですが、温厚で善良な人ばかりです。
しかし、何故かはさっぱりわかりませんが、皆善良な人間に見えないのです。
私には兄が一人、双子な妹が二人います。
レルゲンお兄様は、賢く武術も達者で、基本なんでも卒なく熟し、物凄く整った顔立ちをしていらっしゃる、まさに文武両道、才色兼備な方です。
双子な妹のリリースターとレミーダストは、魔法と魔術が得意です。より詳しく言うならば、リリーが魔法を、レミィが魔術を得意としています。明るく元気なリリーと静かで温和なレミィは、どちらもとても可愛く、この二人も才色兼備と言えるでしょう。
優しく、賢く、才能に溢れ、容姿は端麗…まさに欠点無しの自慢の兄妹なのですが…勘違いされ易すぎる外見と言動によって、ものすごく損をしているのです。
やわらかい態度で他者に接しようとしているレルゲンお兄様は胡散臭い詐欺師の様で、リリーは明るく元気なだけなのにサイコパスの様で、レミィは闇というか病みというか…
そう言った具合で、貼り付けたような笑顔と、どこか壊れていそうな様子と、黒髪黒眼の眼に光のない無表情な様子と…外見と中身が違いすぎる一族なのです。
いろいろ説明しましたが、そう言う私はと言うと、よく『悪役令嬢の様』だと言われます。
微笑めば『悪巧み』、話せば『皮肉』、動けば『威圧』、といった具合らしいです。全部婚約者に言われました。
ここで、私を(何故か)敵視している婚約者様についてお話ししましょう。
まず、彼は我が国の第二王子であり、王太子です。第一王子が自由奔放過ぎ、かつ私と婚約をしたため、第二王子が王太子になると言う事になっております。
婚約者が私でなければ、能力的にも婚約者の支持力的にも第三王子が王太子になる為、もう少し私に優しくしてくれても良いと思うのですが……
もちろん、私が愛される、等と言う贅沢な望みは言いませんが、せめて優しくしてほしいです。これでは子を成すことも難しいのでは…?
そんな婚約者様、ガーバル様は、学園に入りとある平民の方と知り合ったからというもの、更に私に厳しくなりました。
なんでも、私がその平民の方、レティサラさんを虐めている、という理由らしいです。
えぇ、もちろん虐めなんてしておりません。そんな事をする暇があるのなら、笑顔の練習をいたします。
明確な証拠も無く一方的に決めつけているガーバル様が何故か私の直ぐそばで転げたり、飲み物をこぼすレティサラさんを妾として娶るのも良いでしょう。私は何も言いません。愛し合っている様子なので。
なのですが、なんだか最近、この二人で結託して私を排除しようとしているように見えるのです。言ってくださればお二人に近づかないのに…
さて、現実逃避もそろそろ終わりましょう。
「聞いているのかローズ!!」
「はい。もちろん聞いておりますよ」
「なんだその態度は!」
今、どういう状況かと申しますと、レティサラさんが私のそばに来た途端、なぜか急にレティサラさんの頭上に水の塊が生成され、そのままレティサラさんへ落ちたのです。
ほんとになぜでしょう?
「バル様、落ち着いてください…!私は大丈夫ですから」
「サラ…しかし、こいつは今までも同じことをしているのだぞ」
「大丈夫ですから…おちついて?」
「…しかたない。サラの優しさに感謝しておけよ!ローズ」
「ええ、わかりました」
ガーバル様の言葉はほとんど聞いていませんでしたが…ええ、 レティサラさんには感謝します。なにせ、私、今から予定がありましたので。危うく遅れるところでした。
「サラ、寒くはないか?」
「はい、バル様のおかげで暖かいです」
そう言いながら、イチャイチャし始めたお二人の横を通り、学園内の隅にある林へと向かいます。
少し遠いのですが、食後の運動と思えばちょうどよいですね。
「きゃあああああ!!」
階段の上から、レティサラさんが吹っ飛ぶ様に下へ落下していきます。
それを私は、手を伸ばした状態で、上から眺めるしかできませんでした。
「大丈夫かッ!?」
「ひゃっ……バル、様…?」
落ちていくレティサラさんを、偶然下に居たガーバル様が受け止めました。
それをみて、思わず安堵のため息をついてしまいました。
「おい……!ローズッ!!貴様そこで何をしているッ!?」
そう言われ、すぐにその場から離れていれば良かった、と気づきました。
レティサラさんにも、ガーバル様にも、誰にもみられていなかった為直ぐに立ち去っておけば、あらぬ疑いを掛けられる事はありませんでした。
「わ、わたくしは————」
「言い訳か貴様ァッ!!!」
余りの事に、安堵と緊張がほぼ同時に襲ってきた事で思わずどもってしまいました。
あぁ、これは完全に私が悪ですね。
「いえ、私ではございません」
「貴様しかいないではないか!」
彼女の制服を見れば、彼女が風魔法で吹き飛ばされたと、直ぐにわかるはずなのですが、ガーバル様は真っ直ぐ私を見ていました。
……まさか初めてしっかりと目が合う瞬間が今だとは、思いもしませんでしたね。
「私は魔法も魔術も使えません、レティサラさんは風魔法で吹き飛ばされていました」
聞き取りやすく、そしてなるべく早口で説明します。
ここで、下に急いで降りていれば、少しは落ち着いていた、かも知れませんが、あいにく、今の私は堂々と立っている様で、長いスカートに隠された両脚は僅かに震えているのです。ここから少しでも体を動かせば、私は膝から崩れ落ちてしまいます。
「貴様には精霊や妖精がいるでは———」
「彼らはその様な事に手は貸しません」
思わず、力強く、反論してしまいました。
初めて見せる態度に、ガーバル様は思わず狼狽えます。
これ、ほんとに不味いですね。
「ふん、あなたの家で、魔力放出が苦手な者も使える魔道具が開発された…と言う噂がありますが、ご存知で無いと?」
バカにしたかの様な調子で、私の横から宰相様の第二子であるハーケン様が現れました。
なぜそんなところから現れたんですか…
「開発されている、ですよ、ハーケン様。今はまだ完成の目処がたった程度で……」
「では、ワタシが見たあの魔道具は何ですか?」
「私は魔力を体外へ放出できないのですよ?持っていても意味のない物は持ち歩きません」
「普通ならそうですが、あなたの家で開発されている魔道具が完成していたら?辻褄は合いますよね?魔力の籠った物を持っているんですから、それが魔道具なのでしょう?」
ハーケン様は、普段は物凄く真面目で優秀な方なのですが、ガーバル様の事となると途端に残念な方になってしまいます。
余りにも滅茶苦茶な推理ですが、その事実を知らない方が見ると、『優秀ハーケン様が言うならそうなのでは』と、そうなってしまいます。
……そろそろ、動揺も震えも治ってきました。帰りましょう。流石に、もう付き合いきれません。
「疑わしきは罰せず、と言う言葉を知っていますか?決めつけは良くありませんよ。私は用事がありますので、これにて失礼いたします」
「待て!!貴様、逃げれると———」
ガーバル様が言いながら階段を登ろうとした瞬間、大きな魔法陣が二つ現れ、荒れ狂う暴風と、途轍もない冷気が私の背後から私を避け、階段の上から下まで駆け抜けました。
床、壁、天井に至るまで、全てを凍て付かせた冷気によって、階段の下にいらっしゃる方々はその場から動けません。ガーバル様とハーケン様は派手に転んで床に縫い付けられています。
「ねえさまに、何してるのかな〜???」
「愚か、無知、蒙昧。可哀想」
魔法陣の中から、校外学習をしているはずの妹達、リリーとレミィが現れました。
なぜここにいるのか、等いろいろ聞きたいところですが、私は疲れました。
「帰りましょう、リリー、レミィ」
「えー?泣かせようよねえさま」
「マリ姉様傷つけ続けた。決定的、殴る」
「2人が怒ってくれたので良いです。早く帰りましょう」
早く帰って、お父様に報告しないといけないのです。ここまで来られては、面倒なので早く帰りましょう。
「えー?仕方がないなぁ」
「また今度、蹴り飛ばす」
渋々、と言った様子で頷く2人。
リリーもレミィも、小柄で魔法と魔術が得意な割に、かなり武闘派なのです。お父様が現れるのも面倒ですが、2人が暴れるのもダメなのでここは早く帰りましょう。
ガーバル様とハーケン様が何か叫んでいますが、私は疲れてしまいました。早く帰って、眠りたい…
あれから一ヶ月が経ちました。
「マリー、おはよう」
「おはようございます、お兄様」
早朝、庭で座っていると、一見すると胡散臭い様な笑顔をしたレルゲンお兄様が、少し汗を流しながらやって来ました。
「小鳥と戯れるマリー…マリーって、女神様だったりする?」
「何を言っているのですか?」
どうしたのでしょう?朝の日課を終わらせたのなら、寝ぼけているわけでもないですし。
「ふふふ…そう言えば、マリーが寝た後に知らせが入ったんだけど、昨日ハーケンのゴミが捕まったらしいよ?」
「お口が悪いですよ?」
「ああ、ごめんね?無意識でつけちゃった」
そう言って、普通の爽やかな笑顔を浮かべるレルゲンお兄様に、私は思わず苦笑してしまいました。
自然な笑顔より、作った笑顔の方が誠実そうとは…
「かなりわかりやすかったので、妥当でしょう。そう考えると、少し遅いですね」
「ガーバルの愚鈍がハーケンの事を疑わなかったからみたいだよ」
しっかりとした証拠も無いのに決め付けることもできず、正式な調査を行った(教会が)時、ガーバル様がいの一番に堂々とした声で容疑者でハーケン様を除外する、と言ったことで難航した様です。
「さあ、これからが大変だよ。喧嘩を売った馬鹿どもを血祭りに上げないとね!」
「ダメですよ?」
「ふふふ」
流石に冗談の様。恐らく、ものすごい賠償金等を請求するのでしょうね。私の家族は、何故か、私を溺愛しているみたいですから。
☆☆☆あとがき☆☆☆
こんにちはこんばんはおはようございます。
紹介文にも書いてある通り、この作品は書きたいけど書くほどでも無い物をテキトー且つ雑に且つ自己満足に書く物です。
このあとがきには、設定やらなんやらかんやらを書いていく予定(ここ大事)です。
☆☆設定☆☆
ダンジョンや魔物、魔法等があるテンプレな異世界。
『魔法』
空想を魔法陣にして、魔力を用いて使う物。柔軟性に優れマイナス100℃の炎などを出すなど、自由自在の変幻自在。ただし、才能がかなり重要であり、初速は遅い。
『魔術』
魔法で言う空想が理論に変わった物。柔軟性は無いが発動が早く、一定の成果を出せるためコンディションに依存しない。
『マリーローズの得意なもの』
得意と言うより特徴。精霊や妖精等、外見で判断しない存在に好かれまくる。かなりの善人で、ガーバルと婚約してから十年間暴言を吐かれていたが、しっかりと原因を考え、改善しようと毎日奮闘していた。
ちなみに、ハーケンが言ってた魔道具(と言い張った物)は『精霊王の呼び鈴』と言うものすごいナニカ。
『ハーケン』
レティサラの今までのあれこれはこいつが全部やった。ガーバル狂信者でガーバルのためにマッチポンプを仕掛けていた。アホ。
普段、取り止めのない事を考えているのだけど、ある日ふと『悪役令嬢物って書いたことないなー』と思って、そこからなんやかんなあってこんな感じになった。
書きたかった事は、『めっちゃ善人だけど悪人面の主人公が、聖女を虐めたって理由で婚約破棄宣言を大勢の前で言われたけど、もちろん誤解で愛想が尽きた』ってやつ。
第一王子とラブコメさせようと思ったけど、やめた。
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