転生上杉謙信は異世界でも女体化した武田信玄に振り回される!?~軍神x虎~交えるのは剣じゃなくて心!?

飢杉

第1義 我は軍神

――戦は終わったはずだ。


 それなのに、俺の胸は、いまだに乱れている。


 あの"女テイマー"を見たときから。


 虎が、目が、所作が、すべてが“武田信玄”を思わせた。


 だが、まさか、そんなことが――




***




 冷たい風が吹き、空は一部、禍々しい雲に覆われている。


――ここはどこだ?


▶スキルを習得しました


 頭の中に響く言葉。


「スキル?なんだそれは…?」


▶スキル習得:軍神(SS)【P:戦闘時に剣術+スタミナ+攻撃力上昇】

▶スキル習得:毘沙門天(SS)【P:戦闘時に防御力+治癒力上昇】


「軍神…毘沙門天…?!」


「定満?兼続?景家?景持?お主らはどこにいる?」


※上杉謙信生前の家臣たちである。


「――俺は、一体……?」


▶初期装備を支給しました


初期装備…?


「これか!」


▶Nレア ロングソード

▶Nレア 青い軽鎧

▶Nレア レザーの靴

▶Nレア 鉄の頭鎧


 とりあえず装備してみるか…。

 頭鎧は、俺の白銀ロングヘアーが絡まるから、なしだな。うん。


 そういえば※小島弥太郎がこんなこと言っていたな。

※上杉謙信の生前の近臣である。


『異世界転生って知っているか?』

 気づけば、知らない世界に居るんだとかなんとか。


 つまり…俺がいるのはその異世界ということか!とりあえず、あの禍々しい雲が気になるな…。ちょっと見てくるか!


 俺は剣を握り、駆け出す。


***


 その道中、スライムやゴブリンと出会した。


 俺の身体を包むのは、淡く青く輝くオーラ――


 これが「SSレア 軍神」の力だ。筋肉は研ぎ澄まされ、呼吸は深く、無尽蔵のスタミナが体内に満ちていく。剣を握れば、刃が切れ味を増し、俺の技はまるで神が宿ったかのように冴え渡った。


 その上に、淡く赤く揺らめくオーラ――


 「SSレア 毘沙門天」が重なる。体中を硬い鎧のように守り、どんな攻撃もはじき返す防御力を俺に与える。痛みは薄れ、疲労は遠のき、敵の刃は俺に届かない。


「これが、俺の新たな力か…!」


 スキルの加護を受けた俺は、禍々しい雲の下…村を襲うゴブリンの群れに斬り込んだ。


 青と赤のオーラを纏い、閃光のように動く剣技で次々に敵を薙ぎ倒す。その姿はまさに、軍神・毘沙門天の化身だった。


「どいつもこいつも雑魚だ!」


 叫びと共に斬り倒しながら、俺は村の中心へ駆ける。だが、その先で待っていたのは、見るからにデカく異形の“ゴブリンチーフ”だった。


 身の丈より高い鉄の鎧をまとい、鈍重な斧を振りかざす。奴が一振りするたびに地面が震え、倒れたゴブリンたちの死体が散乱する。


「ここが勝負どころか…!」


 俺は一瞬間合いを詰め、青と赤のオーラを最大限に輝かせた。軍神の剣術と毘沙門天の守りを極限まで引き出し、躊躇なく斧に斬りかかる。


――キーン


 一撃目で鎧を深く抉り、二撃目で鈍重な斧を叩き落とす。

 しかし奴もただの雑魚ではない。強烈なカウンターを放ち、俺の腕に鈍い衝撃が走った。


 だが、痛みはすぐに引き、赤いオーラが傷を癒す。その隙に俺は渾身の一撃を振り下ろし、ゴブリンチーフを地面に叩きつけた。


「これで終わりだ!」


 轟音と共に周囲の敵が怯み、村は静寂を取り戻した。


 俺は剣を鞘に収め、深呼吸を一つ――これが、俺の転生後の始まりの戦いだった。


***


 村人たちが歓声をあげる中、俺は汗をぬぐいながら立ち尽くす。戦闘の余韻がまだ全身を満たしているが、心は次の局面を見据えていた。


「俺はただの転生者じゃない。ここで名を上げ、力を示さねばならない。」


 やがて村の広場に、ギルドの使者が現れた。身にまとう革鎧にはギルドの紋章が輝き、彼の目は俺の戦闘をしっかりと見届けていた。


「まさに軍神の如し…。そんな装備で、よく町を救ってくれた!もしよければ、我がギルドに来てくれないか?名前はなんと言う?」


 俺は笑みを浮かべ、力強く頷いた。


「上杉謙信――この名を、ここで刻む。」


 俺がギルドの使者と言葉を交わしているその時、ふと視線の端に人影が映った。その艶やかな黒髪に紅の気配がちらりと覗いた。


 怒っているようで、どこか気恥ずかしそうな鋭い目つきで辺りを見渡す少女。その後ろには威厳ある虎が静かに佇み、彼女の存在感を際立たせていた。


「あの者は…?」


ギルド使者が一瞬だけ視線を送る。


「王国直属、Aランク任務に従事するビーストテイマー、"タケダ=フウカ"だ。」


 二人の視線が一瞬すれ違う。だが、まだ何も言葉は交わされず、ただ互いの存在を確かめ合うだけだった。


「タケダ…?」


 空に浮かぶ雲は、ゆっくりと晴れはじめていた。 だけど、俺の胸には妙なざわつきが残る。


 タケダ=フウカ。あの女は一体、何者なのか――


 これが、異世界無双の始まり…


――だったはず!


 いや、普通にあの兜、色は真っ赤だが金色の角見覚えあるぞ…!?

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