ひとつきりの綴り部屋

@1page_a_day

プロローグ

人は、死んだら“本”になる。



皮肉な話だ。

生きている間は忘れっぽいくせに、

忘れたいことだってあるだろうに――

死んでからは、全部記録に残される。


生き様も、死に様も、

心の裏も、愛した人の名前さえも。


すべての“真実”が一冊の記録となって、

この図書館に収められる。


そして人の魂は皆、最期に自分の本を読む。

記録と記憶を重ね合わせ、やがて静かに眠りにつく。


今日やってきた男も、そのひとりだった。

順調にページをめくっていた右手が、不意に止まる。




「この記録は、嘘だ。俺は――殺された」

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