第32話 楽園の代償
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それからいくつか月日がたったある日。いつものように、。朝練という名の駄弁り会を行うべく部室に入ると、昨日までなかったものが新しく導入されていた。
「こ、こいつは...!!」
「ふっふっふ、どうだい?我が部にもついに導入されたよ...!」
「やったねえ、ごねた甲斐があったねえ!」
俺の目に飛び込んできたのは、人類はおろか、その他の生物までも惑わす、伝説のぽかぽか器具...こたつだった。
「って、なんでうちにこたつが?てかごねたってなんですか!?」
「いやね、最近めっきり寒いじゃない?でさ、あまりにも寒いからって、小型ストーブが導入されることになったんだけど...」
「小型ストーブなんかじゃ足りないでしょ?それに、絶対こたつのほうがいいよね~って思って、直談判してたんだよ。で、それが昨日OKされてね、晴れてこたつがこの文化部に導入されたってわけ。」
「うーん...」
2人の話を聞いて、俺は首を傾げた。
「なに、こたつは嫌?」
「そうじゃなくて...実先輩、直談判ってどうやったんですか?」
「え、どうって...」
「いち部活動、しかも運動系じゃない...うちらに投資してもなにも帰ってくる見込みはないのに、直談判したくらいでこちらの要求が通るとは思えないんですが。」
「うっ」
「おいなんだ今の、やっぱり絶対なんかあっただろ。」
「い、いや~...何もないよ?うん、何も...」
「いやいやいやいや...先輩方?ほんとのことを言ってくださいよお、怒りませんからぁ。」
「...ほんとに怒んない?」
「うん怒んない」
2人は顔をも居合わせ、おずおずと切り出した。
「「じ、じつは...」」
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「馬鹿かあんたら!!」
「ひーん!」
「怒んないって言ったのにー!」
数分後、事情を聴いた俺は2人に説教を垂れていた。怒んない云々は方便だもの、昔俺も親に騙されたし。
で、なんでこんなに怒っているのかというと...
「俺がいないところで、なんで俺のコスプレバイトが決まってるんだよ!しかも無給て!!」
「し、仕方なかったんだ...!先生の知り合いがやってるケーキ屋で、どうしても人手が足りないっていうから...!」
「なら先輩たちがやってくださいよ!なんで俺なんですか!絶対面倒だからって俺に押し付けたでしょ!しかも...!」
このバイトの件で、俺が一番怒っていることを叫ぶ。
「なんでよりによって、コスプレ衣装が『ミニスカサンタ』なんだよ!!せめてトナカイであれ!!」
「足りないのがサンタ役で、衣装が女性用しかないっていうんだもん。仕方ないじゃんね。」
「なら咲月先輩がやりゃあいいじゃないですかぁ!!」
「いやだよ、ミニスカなんて。スパッツはいちゃダメっていうし。」
「俺だっていやだよ!!」
俺は叫びながら頭を抱えるのだった。
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