第33話 男ミニスカに需要はあるか
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数日後、俺は商店街に来ていた。先輩が勝手にOKしてきた、例の件を遂行するためである。
指定されたお店へ行くと、少し驚かれた。まあ無理もないだろうよ。あっちは咲月先輩がくると思って依頼したはずだしな。
何はともあれ、用意された衣装を着る...衣装を...
「...男がミニスカサンタの恰好なんてして、どこに需要があるってんだよ。くそが...」
そんな悪態をつきながら、衣装を着終わった。足の毛は剃ってきたし、大丈夫なはず...いやだ大丈夫じゃないだろこれ。男の尊厳が...あばば...
ため息をつきながら更衣室から出ると、店長は無言でグーサインを出してきた。俺は首を横に振るが、なぜか店長は目を輝かせながら、何度もグーサインを出してくる。
そして、寒空の中店先に出て接客を始めた。
...その一時間後のこと。
「店員さん!こっち向いて笑顔!」
「あ、あはは...」
「ありがとうございますう!」
「店員さん!今度はピースしながら舌を出してください!」
「ええ?...こ、こうれふか...?」
「ありがとうございます、ありがとうございます...!」
予想以上の大盛況。ケーキは爆売れ状態で、いつの間にか俺の写真を撮るためのチケット替わりになっていた。この町には性癖ねじ曲がってる人しかいないのだろうか?何をどう間違えたら、男のミニスカサンタに対する需要が生まれるのか。
「店員さん!私を罵ってくださいな...!」
「男のミニスカサンタに興奮してんじゃねえキモ豚があ!!」
「ぶひぃー!...って、男?」
「男だよ声で気づけよ!」
...まあ中にはこんな人もいたけど。とりあえず、目標以上にケーキが売れたようで、店長さんはうれし涙を浮かべていた。
そしてちょうど終わったっタイミングで、咲月先輩がやってきた。
「やあお疲れ、どうも大盛況だったみたいだね。」
「咲月先輩...よくもまあこんなものを押し付けてくれましたね...」
「いいじゃんいいじゃん、似合ってるよ?」
「そういう問題じゃ...はぁ。まあいいです。とりあえず自分着替えてきます...」
そういって奥へ行く。更衣室の扉を開けようとして、後ろから人の気配がしたため、振り返った。
「なんでついてくるんですか、咲月先輩。ここ更衣室ですよ。」
「気にしないで、減るもんじゃないでしょ」
「気にしますよ!」
「大丈夫大丈夫、数枚写真撮るだけ...」
「帰れ!」
「いやだね、ちゃんと許可も取ったんだから。」
「...許可?」
「店長からね。ええと...『奥の更衣室、プレイエリアとして使っていいよ』ってさ。」
「てんちょおぉぉぉ!!!」
...その後、店長と咲月先輩に対して、正座させて説教垂れた。どうも店長は、俺と咲月先輩が付きあってると思っていたらしい。
油断も隙も無いと、咲月先輩のことを改めて危険人物認定する俺なのだった。
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