第26話 知りたい彼と知られざる真実
☆☆☆
数日後、放課後の部室にて。
「渉君ってさ、男の娘って文化どう思う?」
「何ですかいきなり」
部室でゆったりとラノベを読みながら過ごしていたところに、実先輩が横に来て、そんな話をし始めた。
「知ってる?男の娘。男の娘って書くんだけど。」
「あー、今読んでるライトノベルに、ちょうどそんな感じの人物がいますよ。」
「そ、そうなんだ。...そのキャラは好き?」
「ん~、まあそうっすね。かわいいとは思いますよ。」
「ふ、ふ~ん...お、男の娘って、普段どんな格好してるのかな。」
「他は知らないですけど、このライトノベルに出てくる子は、ペット兼メイドやってますよ。ほら、犬耳としっぽつけてるこの子です。」
「ぺっ!?...わ、渉君は、その、ペットに欲情を...!?」
「おいこら、変な勘違いしてんじゃねえ」
実先輩の額を軽くデコピンする。先輩は「あうっ」と情けない声をだした。
「あのですね、この子は元々ただの犬だったんですよ。それが魔法の影響で人化して、犬耳としっぽは残ったってことです。」
「ああ、そういう...」
「それと、俺の言ったかわいいは、庇護欲ってやつです。それこそペットとかに抱くやつですよ。だから何も変じゃありません。...まあ、そんな子を登場させるこのライトノベルの作者はあれかもですけど。」
「あ、あはは...それはまあ、言わないお約束ってことで...」
先輩は苦笑いした後、こっほんと咳払いした。
「ところで...さ。前に渉君、僕のことを...かっ、かわいいって言ってくれたよね。」
「え?ああ、言いましたね。」
「...あれも庇護欲?」
「ああ、それは違うっすよ。」
俺はきっぱりとそう答える。
「...ふぇっ?」
「庇護欲じゃなくって、単純にかわいいって思っただけです。口調とか、言動も踏まえてね。だから、たまに男らしいところを見せていけば、ギャップ萌えで咲月先輩にアピールできるんじゃないかなって思って。」
「ああ、そういう...前にも言ったけど、僕と咲月がくっつくことはないよ。」
「口ではそういいますけど、実際お二人めっちゃお似合いだと思いますよ。前にも言いましたけど、似たもの同士だし息ピッタリだし。」
咲月先輩は...どうやらいないらしい。こそこそ喋る必要はなさそうだ。
「う~ん...」
先輩はどこか煮え切らない表情を浮かべている。何かまずいことを言っただろうか。
「ん~...まあいいか、言っても。別に隠せって言われてないし。」
「実先輩?」
「あのね、渉君」
実先輩は、笑みを浮かべながら言った。
「僕と咲月は、双子なんだよ。」
...なんかめちゃ重要なことをさらっと言わなかったかこの人!?
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