となりのドラちゃん 〜勇気の剣と僕の冒険〜

@blueholic

第1話 プロローグ

山に囲まれた村には、よく言えば静かで、悪く言えば何もない。

きれいな川があって、夜は星がすごくよく見える。

コウは、そんな村でおじいちゃんとふたりで暮らしていた。


 


冬の初めのある日、コウは裏山の小道で、

ひんやりした風といっしょに、かすかな泣き声を聞いた。



 ──ミィ…ミィ……



「……わんこ?」


 


茂みの中にいたのは、

抱えたら僕の腕の中にすっぽり収まるくらいの大きさで、

白くてふわふわした生き物だった。


ぐったりして、消え入りそうなか細い声で泣いている。


 


「おなか、すいてんの……?」


 


コウはためらわず、シャツを脱いでその生き物を包んだ。

軽くて、温かくて、とてもやわらかかった。

まるで、生きてる雲みたいだと思った。



 


家に戻ると、おじいちゃんは昼食の支度をしているところだった。


僕がこの子ににミルクをあげたいと言うと、

ちょっとだけ困った顔をして言った。


 「変わったペットを拾ってきたな」


 

ミルクをあげるとぴゅるぴゅると音を立てて飲み、

すぐに布団に潜り込んできたその子を、

僕は「ドラちゃん」と名付けた。


犬か猫か、よくわからない。

ただ、しっぽがちょっと長くて、

頭に2本のツノがあって、

絵本で見たドラゴンが子供だったらこんな感じかもしれない。

 


村の人たちは、「コウのところの犬、変わってるね」と笑っていた。



確かに、こんな生き物は森でも裏山でも見たことがなかった。

もしかしたら、この子はどこか遠いところから来たのかもしれない。



けど、多分ドラちゃんが何の生き物なのかは関係がないと思う。



とにかく僕たちはすぐに仲良くなった。


いつも一緒にいるし、多分これからも──

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