第7話


数日後、花音ちゃんのクラスの女子が、仲の良かった女子の悪口を言ってしまったようで、また学年ラインで叩かれていた。

 すると花音ちゃんが、長いコメントを送ってきた。

「中村花音です。実はわたしも一年前、仲の良かった友達がわたしの悪口を言っていたと学年ラインで知って、ショックのあまり、その友達とのラインをブロックしてしまいました。あの時、わたしは、信用していた友達に悪口を言われたということの、怒りや悲しみでいっぱいいっぱいになり、それ以上傷つくことを恐れていて、ブロックしてしまったのだと思います。でもそれがいけなかったと今になって後悔しています。

あの時、他人が送ってきたラインだけを信じたりしないで、その友達にちゃんと会って、真偽を確かめるべきでした。

 その友達は、めげずに自分の真意を手紙に書いて送ってきてくれました。それは、ラインで知った内容とは違っていて、その友達に悪意などなく、むしろわたしを心配してくれていたのだと一年たった最近、知りました。

その友達とは和解しましたが、あの時、きちんと友達に向き合っていたら、友達の一年間をムダにしないで済んだことを今頃、後悔しています。

 自分の話はこれくらいにして、学年の話をします。

 仲良しだと思っていた友達に悪口を言われたAさん、ショックを受けたことが、わたしには痛いほどわかります。でもちょっと待ってください。

その友達は面と向かってAさんの悪口を言いましたか? もしそうなら、それはさほどショックを受けるべきことではないかもしれません。仲の良い友達が面と向かって悪態をついたなら、あなたがそれを冗談として流してくれるほど、二人の絆が強いと思っているかもしれないからです。これは関西の芸人がよくやる芸風です。もしそうだとしても許せないほどの内容だったなら、その友達に、「傷ついたから二度と言わないで」と釘を刺しましょう。

もし、その友達があなたのいないところであなたの悪口を言い、それがあなたの耳に入ったのなら、私と同じ間違いをしないでくださいね。伝え聞いた内容を鵜呑みにせず、必ずその友達と会って、真偽を確かめるべきです。

それともう一つ、お友達にアドバイスしたいのが、謝罪の手紙を送る場合です。手紙を書くのにどんなに慣れていなくても、それをAIに考えてもらってはいけません。必ず自分で考えて書いてください。どんなにヘタな文章でも大丈夫です。自分で考えないと、絶対に誠意は伝わりません。

ちなみに私が受け取った手紙は初め、友達のスマホのAIが作ったものでした。そうとは知らずにその手紙に私は感動して、和解しました。あとでAI作成の事実に気づき、当時、感動したからこそ余計に腹が立ち、その友達とまた決裂しました。

 二度目に受け取った手紙には、差出人の名前がなくて、開けてしまいました。すると、それはその友達が、AIに頼る前に自分で書いた、手紙の下書きでした。ボールペンで何回も書き直したあとがあって、合計五枚、五回書き直したみたいでした。それはAIが考えた手紙と比べると文章は平凡だし、それなのにわかりにくかったけど、なぜか私は、一回目の手紙より感動して、ちょっと泣いてしまいました。

それで、わたしたちは今度こそ和解しました。

私の体験を披露することで、Aさんとお友達が、そして学校じゅうのみんなが、誤解や行き違いのないように、直接会話をする毎日を送ることを願います」


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