第6歯 悪魔狩り開始
首都の宮殿に帰還し、
俺と軍曹は現場の惨状を報告した。ただし、ジャックとの接触と戦闘は伏せた。
帝国内じゃ魔術師なんて疫病扱いだ。
下手に話せば、
皇帝直々の査問にかけられちまう。
その後、イーグル部隊が俺と軍曹以外全滅、他の部隊も壊滅状態ってことで、
帝国軍上層部が右往左往してる中、新隊員が補充されるまで5ヶ月の休養命令が出された。
「…少尉、良かったんですか?
ジャックのことを報告せず、
父上…皇帝陛下から休養もらっちゃって。」
家に帰る途中、軍曹が恐る恐る聞いてきた。夕暮れの首都は蒸気機関の煙で霞み、遠くの歯車塔がギィギィと回る音が響いてた。
「情報を整理したかったんだよ。休暇っつー名の調査期間さ。ジャックのことは謎だらけだ。下手に報告して、帝国内で魔術騒ぎが起きたらシャレになんねえ。アイツの赤い目、見たろ? あれ、魔法公国じゃ忌子扱いされる色だ。たぶん、どっかで追放された放浪者だろ。」
軍曹は少し安心した顔で胸を撫で下ろした。その目は、でも、どこかジャックの言葉を思い出すように揺れてた。 帰り道、他愛のない雑談して家に着いた。
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数週間後、ジャックの魔石で新武器を
試すため、軍曹とこっそり荒れ果てた僻地へ向かった。崩れた蒸気塔の残骸が風に軋み、地面には魔物の爪痕が残る不気味な荒野だ。
「いよいよ最終実験だな…。ジャック、アイツの考えが読めねえ。魔物を生み出した連中と何か知ってんのか、ただの気まぐれで助けてんのか。 何も考えてねえ可能性もあんだろな。」
独り言を呟きながら、数週間前の出来事を思い出した。
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家に帰ってからは、普段通りの生活で療養したり、兄妹水入らずで休暇を楽しんだ。
軍部からの報告書を読みつつ、
ジャックの魔石を分析してたんだが…
素人知識じゃどうにもならねえ。
加工すらできず、数日悩みまくった。
ある日、軍曹と買い物楽しんで帰宅したら、リビングに予想外の客がいた。
「よぉ、お二人さん。
いい買い物できたみたいだな? 悪いな、
勝手にくつろがせてもらってるぜ。」
ジャックが、まるで自分の家みてえにソファにふんぞり返ってた。黒いローブの裾が埃
まみれで、赤い目が薄暗い部屋でギラつく。
「アンタ! 今すぐ出てけ、さもなきゃ衛兵に突き出すわよ! 勝手に人の家に上がり込んで、ふざけんな! どうやって入ったの!?」
軍曹がブチ切れて、ジャックの頭に銃を
突きつけた。その手は微かに震えてたが、
目はマジだった。
「おいおい、落ち着けよ。今日は用事があって来たんだ。侵入のトリック? 教えてやるには、お嬢ちゃんがもっと強くなる必要があるぜ。」
ジャックが嘲笑い、刀の峰で軍曹の手を
弾き、瞬時に足技で絞め上げた。
動きが速すぎて、
まるで影が踊ってるみてえだ。
「はぁ…軍曹、お前の判断は正しい。
俺だってコイツをぶん殴りてえ。だが、
アイツは魔物に対抗する術を教えてくれた
恩人だ。 下手に刺激すんな。
ジャック、頼むから軍曹を離してくれ。」
ジャックは大人しく軍曹を解放した。
「ゲホッ…死ぬとこだったわ! 通報したい
けど、少尉がそう言うなら我慢します。
紅茶淹れてくるから、待ってて。」
軍曹がジャックを睨みつつキッチンへ向かった。その背中は、戦場での剣さばきを
思い出させるくらいキリッとしてた。
「で、要件は?
また新しい魔物でも出たか?」
「いや、まだ大丈夫だろ。魔法公国も次の手を慎重に練ってるみたいだしな。
それより、アルゴ。お前、魔石の加工で
途方に暮れてんだろ?」
「なっ…⁉︎ なんで知ってんだ!」
「前に言ったろ。軍曹の双剣の魔石、
俺のと似て非なるもんだって。あれ、
実は魔物の魂を封じた欠片で、
帝国の技術じゃ扱えねえ。
説明足りなかったから、教えに来た。」
ジャックが空を掴む仕草で、赤い古びた本を
3冊、ドサッと机に置いた。
表紙には禍々しい紋様が刻まれてた。
「2冊は魔物と魔石の基礎と応用だ。
よく読んで試行錯誤しろ、すぐ扱えるようになる。もう1冊は魔術の基礎だが…
帝国じゃ禁忌扱いだから、気をつけろよ?
まぁ、気が向いたら読めよ。」
ジャックが立ち上がり、刀で空間を斬ると、赤黒いゲートが開いた。
潜って消えちまった。部屋に残ったのは、
魔石の微かな脈動と本の古い匂いだけ。
「お待たせー。ロイヤルミルクティー…って、少尉、あの薄汚い魔術師どこ行った!?」
一悶着あったが、紅茶とお菓子を楽しみ
ながら、渡された本で勉強に励んだ。
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「ふぅ、バレずにここまで来れたぜ。」
「でも、休暇命令中にこんなことして
バレたら、規律違反で営倉行きですよ!」
僻地に到着後、軍曹が新武器の最終調整を
しながら不安を口にした。
周囲は荒野に点在する蒸気管の残骸が
風に軋み、遠くで魔物の咆哮が響く。
「今更だろ? なら一緒に来なきゃ良かったじゃん。試験運用くらい一人でできるぜ。」
チェックと観測しながら愚痴ると、
意外な返事が。
「緊急事態で少尉がやられたら、
助けられませんよ。私、魔石の扱いなら
少尉よりセンスありますし。
それに…家で一人、寂しいですから。」
軍曹が頬を膨らませつつ、双剣を構えて周囲を警戒する姿は、まるで戦場で魔物を斬った時みてえに頼もしい。 どうやら未知の魔石に不安はあるけど、俺と共同で開発した自信が
勝ってるらしい。
「さて、武器の調整は全部完了だ。新拳銃、
魔石の力を引き出せるよう改造したぜ。
周囲に敵も味方もいねえ…はずだろ?」
「はい、前線から離れた最適な場所を選びました。これでじっくり試し撃ち…あら少尉、
すいません。双眼鏡で見えました。」
冷静に報告した。地平線の向こうから、魔物の群れが黒い波みてえに押し寄せてきた!
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一方、魔法公国では…
「公爵、例の計画が順調です。魔物の召喚数を増やし、帝国の辺境を次々落としてます。」
ベルゼーブ将軍がルシエル公爵に報告。闇の祭壇で魔石が不気味に光り、召喚陣から異形の気配が漏れてた。
「良いぞ。だが、ジャックとイーグル部隊の
動向は? あの裏切り者が魔石の秘密を
漏らした可能性は?」
「諜報員によれば、ジャックは単独で動いてます。イーグル部隊の隊長と副隊長は
休養中ですが、魔石を扱ってる気配が…。」
「ふん…帝国が魔石を使うとはな。だが、
所詮は技術頼みの愚か者どもだ。
我が公国の魔術で全て飲み込む!」
ルシエルの笑いが響いた。だが、その背後で、召喚陣の光が一瞬、不安定に揺れた。
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