第5歯 邂逅と影の陰謀

「魔石? あー…そういや、前に瓦礫漁ってる時に、なんか熱気感じる変な石見つけて、

遊び半分で組み込んだっけな…。」


「遊び半分で造ったもんをアタシに渡したんですか!?」


「いや、まぁ…危険性ねぇように調整した上

での話だからな?

まさか魔術師の使う素材だったなんてよ。」


偶然の産物に思わず驚いてると、ジャックがニヤニヤ笑い出した。

「くっくっ…アルゴノート、なんか名前長いからこれからアルゴって呼ぶぜ。お前、ほんと変わり者だな。普通、未知の石なんざビビって使わねえだろ? 昔、オレも似たような無茶やったけど、師匠にボコられたっけ…。」

「アルゴって…皇帝のオッサンみてえな呼び方すんなよ。まぁ、いいけど。興味湧いたら何でも試すのが俺ん家のモットーだからな。」

「それ、少尉が勝手に言ってるだけでしょう! …昔だって、ガラクタで爆発起こして皇帝に怒られたの、忘れたんですか?」

「おっ? 兄妹かよ、仲良いな! オレも昔、

義妹と似たようなバカやってたけど…まぁ、今は放浪暮らしで縁遠いけどな。」


ジャックが気持ち悪ぃぐらい

ニヤついてきた。廃墟の風がローブを

揺らし、遠くで蒸気管がキィンと鳴る

中、そいつの赤い目が一瞬、

どっか寂しそうに揺れた。


「うっせぇ…。で? その魔石ってのは、魔術か何かじゃねえと魔物を倒せねえってことか?」

「ご名答! せっかくだ、オレの魔石をやるよ。これ、ただの石じゃねえ。魔物の魂を閉じ込めた鉱石で、魔術の触媒にもなる。扱い間違えると暴走するから気をつけな。 拠点に帰って好きに使ってみな。」

ジャックが黒い袋をポイっと渡してきた。


「いいのか? くれるなら貰うぜ。

で、ジャック、これからどうすんだ?」

ジャックがゆっくり立ち上がり、背伸びしながら答えた。

「また放浪するさ、テキトーに。次に会うとしたら、魔物がウジャウジャいるとこか…もしくは、魔法公国が本気で動き出した時か。

まぁ、会わねえ方がお互い幸せかもな。

健闘を祈るぜ、二人とも!」

ジャックが刀を抜き、空を斬ると赤黒い光が裂け、ゲートみてえな門が開いた。

潜った瞬間、そいつは消えちまった。廃墟に静寂が戻り、血と鉄の匂いだけが残った。


「…ひとまず帰りましょう。情報を整理しないとだし、被害確認や報告もちゃんとしないとね。少尉がまた無茶しなきゃ、ですけど。」

軍曹がチクリと言いながら提案してきた。剣を鞘に収め、キッと背筋を伸ばす姿が、なんか前より頼もしく見えた。 俺は魔石の袋をポケットに隠し、基地へ戻ることにした。


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一方その頃、魔法公国では…

「公爵! ルシエル公爵! 大変ですぞ! 例の脱走した裏切り者、ジャックが、我が軍の使い魔を次々討伐してるそうです!」

白髪銀眼の老貴族、ベルゼーブ将軍が、黒髪黒眼の中年男に報告した。禍々しい燭台が揺れる石造りの議事堂で、魔術の残響が低く唸ってた。

「ほう? あのガキが…。生きてたとは、実に面白い。かつて我が一族の最低の欠陥品だった奴が、今や我を裏切るとはな。 それだけじゃねえんだろ、ベルゼーブ?」

ルシエル公爵が威厳ある声で尋ねた。

「はっ! 実は、襲撃した街で敵軍を壊滅させました! だが懸念が…。諜報員によれば、ユリゼンのイーグル部隊の隊長と副隊長がジャックと接触。副隊長の少女が我が使い魔を倒したとか。」

「なんだと!? 帝国の武器じゃ我が召喚軍は倒せはいはず…。魔石を研究した? いや、

あり得ん。帝国は魔術を忌み嫌い、技術至上を掲げる国だ。 なら、隊長か副隊長が怪しいな…。」

「左様です! 故に、特別部隊を編成し、二人を…ゲフン、丁寧に歓迎し、技能を奪う予定です!」

「好きにしろ。男は例の計画の被検体に使ってもいい。女は…従順なら妾にでもしてやる。ふふ…ははは!」

ルシエルの不気味な笑いが、背徳的な意匠の屋敷に響き、魔石の光が不気味に脈打った。

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