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​私はサタン・クロース。聖夜を血と絶望に染める者。


​私の住処は、町の外れの廃墟同然の小屋だ。そこは、私があの日以来抱え込んできた憎悪と絶望の塊を煮詰めるための場所だった。世間が聖夜に浮かれる今夜、私は遂に、人間としての最後の皮を剥ぎ取ることになる。


​クリスマスにはチキンが欠かせない。聖夜の食卓を彩るには、あの祝福された食べ物が必要だ。鮮度は高ければ高いほど美味しいのだろう?私は手始めに、生きた鶏を切り刻むことにした。あの小学校に鶏がいたのをなんとなく覚えていた。

私は小学校の鶏小屋にこっそり忍び込む。目の前にいる数羽の鶏はただの食料ではない。私が奪われた無垢な幸福の象徴のように思えた。


私は鈍く輝く​冷たい刃を鶏の喉元に当てる。抵抗する鶏の羽ばたきが、甲高い鳴き声が、誰かの悲鳴のようで耳障りだった。


ザクッ。


骨と肉を断つ不快な音。一太刀入れるごとに生温かい血が噴き出し、私のサンタの衣装を瞬く間に染めていく。鮮血のごとく真っ赤な衣装が、黒い闇に包まれていくようだ。

​私は狂ったように鶏を切り刻んだ。骨を砕き、肉を裂き、内臓を引っ張り出す。血まみれになった自分の両手を見つめる。暖かい。私はこのぬくもりを求めていた。


​「ああ、素晴らしいプレゼントではないか」


私はクツクツと声に出して笑った。それは、喉の奥から絞り出すような、ひび割れた、人間ではないような笑い声だった。

​身体を血に染めながら、私は私で無くなっていくのを感じる。鶏の血は、私の内側の人間性を洗い流し、残るのは純粋な、狂気だけだ。

​ようやく私は、人を捨てることに成功した。鮮血にまみれることで、完全にサタン・クロースに生まれ変わった。


サンタが与えるものなら、サタンは奪うものだ。私はこれから「儀式」を行う。与えられた絶望を、奪われた幸福を、皆に分け与える「儀式」だ。

世界は平等でなくてはいけない。

私がもらったのと同じように、私もプレゼントを届けなくては。

鶏の血で赤黒く染まったサンタの衣装は、今日この日になじんでいるだろうか。私は一線を越えるように、暗闇に溶け込んでいった。

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