緊急禁止告知

『ラブコメ』リード・デザイナーとして、本日は私たちが下した決断について皆さんにお伝えしたいことがあります。


《むちむち》はデザインに失敗しました。


 世界大会後、我々はまだ楽観視していました。環境には多様性が存在し、メタゲームは健全性を維持していると誤認していたのです。


 しかし大規模大会で《むちむち》を中心としたデッキは使用率、勝率共に最高を誇りました。

 《むちむち》系デッキにもっとも有利なデッキですら勝率50%を越えることはなく、もはや全てのデッキにおいて《むちむち》の採用は義務と化しました。


 我々は《むちむち》を環境に適度な刺激と厚みを与える選択肢の一つとしてデザインしました。

 しかし彼女は環境を支配し、メタゲームは完全にゆがめられました。


 この状況を是正するため、フォーマットにおいて《むちむち》は禁止されます。



 ●なぜこのカードが印刷されるに至ったか


 コミュニティに寄せられた意見として、初期から《むちむち》は強すぎる。といわれ続けてきました。我々はそれを否定することは出来ません。


 そもそも、強すぎるカードが存在することは悪ではありません。


 ユーザーにエキサイティングな体験を提供するため、カードパワーは徐々に上昇していく必要があります。

 禁止を恐れてスカートを長く、ふとももを細く、胸を小さくしていくことはユーザー、ショップ、そして我々にとっても不幸な結果しかもたらしません。

 カードパワーの過激化とは必要なリスクです。

 

 もちろん、《むちむち》は許されるインフレの限界を目指して注意深く調整されてきました。

 それはカードデザイン中のおおよその期間を大過なく過ごし、強力だが問題のないカードとして印刷されるはずでした。


 しかし、テストプレイ最終盤で《むちむち》は下環境におけるいくつかの組み合わせにおいて見過ごせない影響を与えると判明しました。

 問題となるテキストを削除して対応することは簡単でしたが、それは《むちむち》を実用性のないカードへと変えてしまうことでした。


 結果、我々は《むちむち》のテキストを一部削除すると同時あらたなテキストを追加してリリースする決断を行いました。

 《むちむち》があらゆるヒロインとシナジーがあることは見落とされ、出荷までのタイムスケジュールの制約から十分なプレイテスト無しに印刷されたのです。


 《ラブコメ》は実に複雑なゲームです。私たちは常に正しく物事を進められわけではなく、時には大きな失敗も起こります。

 今回の失敗は悲劇です。しかし、我々は悲嘆に暮れるだけではありません。失敗を謙虚に受け止め、常にユーザーへ最高の体験を届ける方法を模索し、今回の失敗を糧によりよい方法を模索していきます。

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ラブコメTCG攻略テキスト(カードゲーム大好き作家アンソロジー寄稿作品) ロリバス @lolybirth

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