ラブコメTCG攻略テキスト(カードゲーム大好き作家アンソロジー寄稿作品)

ロリバス

攻略記事:大会直前環境解説

 ラブコメTCG、していますか?こんにちは、ロリバスです。

 本稿では年末の大規模大会に向けたフォーマットの環境に関して解説を行います。

 本番に向けて皆さんが環境を理解する一助となれば幸いです。


 ●昨今のラブコメTCGの環境について


 環境の高速化。

 昨今のカードゲーム……いえ、対戦ゲームをプレイしている方なら、誰しもこの言葉を聞いてきたことでしょう。

 実質1ターンで決着がつくと言われる遊戯王から、AI研究により古典的な駒組みが淘汰されつつある将棋まで、令和の対戦ゲームにおいて環境の高速化は不可避です。

 それはラブコメにおいても同様です。具体的には


 ・【ハーレムグッドスタッフ】の凋落

 ・【単ヒロインアグロ】の台頭


 この二点からメタゲームを読み解いていきます。


 ・【グッドスタッフ】の凋落


 さて、当然のように環境の高速化という言葉を使ってきましたが、ラブコメTCG環境において最も高速化したのは何か分かりますか?


 そう、キルターン切る話数ですね。


 かつては3話切り(註:ラブコメTCGにおいて他のゲームのターンに相当する用語を『話』と表現する)

 3話切りとは3ターンで恋路に決着がつく試合展開のことを 指す)などと呼ばれていましたが、昨今の平均キルターンはおよそ1話。

 令和環境では冒頭切りすら珍しくありません。平均3ターンと言われている遊戯王もびっくりの速さです。


 ゲームスピードの変化の影響を最も強く受けたのは?長らく環境の王者に君臨していた【ハーレムグッドスタッフ】でした。


 本稿を読んでいる読者には自明のことと思いますが、念のため解説すると【ハーレムグッドスタッフ】は強力なヒロインを多数詰め込んだミッドレンジ系ラブコメです。


《新たな出会い》を中心に《転校生》《クラスメイト》《エッチな同級生》《部活の先輩》など多数のヒロインを展開し消費したリソースを《ヒロインレース》で回復。相手に合わせたヒロインでフィニッシュを目指すデッキでした。

 【ハーレムグッドスタッフ】の強みはなんと言っても対応力の高さでしょう。相手のデッキに合わせて《暴力ヒロイン》によるビートダウンから《カウンセリング》《激重感情》のシナジーを軸にしたコントロールまでこなせる器用さゆえに長らく環境の王者として君臨してきました。

 しかしながら、永遠にも思えた環境も令和と共に終わりを告げます。なぜでしょうか?


 1ターンキル切るが当然の令和環境において、【ハーレムグッドスタッフ】は遅すぎたのです。


 ヒロイン横並べからの《ヒロインレース》展開が基本の【ハーレムグッドスタッフ】はどうしても展開しきるまでにターンを必要とします。

 展開にターンを使い、《エッチなイベント》でリソースを稼ぎながらを整え相手に合わせたヒロインでフィニッシュする基本展開は令和環境においてはあまりにも遅すぎました。

 そうして淘汰されたハーレムに代わって台頭したのは【アグロ】……俗に【単ヒロインアグロ】と呼ばれるデッキタイプです。


・アグロの台頭


 アグロの台頭について話をする前に、《エッチな》テーマ(註:特定のコンセプトでデザインされたカード群のことを指す)の話をしましょう。


 ここでいう《エッチな同級生》《エッチな先輩》などを擁する《エッチな》テーマは、性に奔放で自分の魅力に自覚・無自覚は問わずぐいぐい距離を詰めてくるおっぱいの大きいヒロインを中心としたテーマです。


 様々なデッキで出張採用(註:他のテーマのデッキにカードが投入されること)される《エッチな》テーマですが、平成において《エッチな》テーマを中心としたデッキは常にメタゲームの負け組でした。

《おっぱい》《密着》《水着イベント》《急接近》などを武器とした《エッチな》テーマは常に一定数の愛好家がいましたが、常に構造的な欠陥を抱えていました。


 《エッチなヒロイン》がエッチなことをするより、他のヒロイン――とくに《清楚系》や《ツンデレ幼馴染み》がエッチなことをした方が、という欠陥です。


 当然、パワーカードである《エッチな》ヒロインは【ハーレムグッドスタッフ】にも必ず採用されていましたが、メインヒロインとしてではありません。


 初動《エッチな》ヒロインから《水着イベント》をサーチし《対抗心》を経由して《幼馴染》を展開。《別にあんたに見せるために買ったんじゃないから!》《何よ、なんか言いなさいよ》《似合ってるって、バ、バカ!!》《やだ……顔、赤くなってる》に繋ぐ。

 このルートは《幼馴染》展開の王道パターンですが、この場合、最終盤面に《エッチな》ヒロインが残ることはありません。


 平成において《エッチな》ヒロインは《巨乳》で序盤の盤面を支えつつ、頃合いを見て他のヒロインのエッチな展開に繋ぐ初動札でしかありませんでした。


 しかし、令和の高速環境下で《エッチな》ヒロインは大きく躍進します。


 悠長に《ヒロインレース》を展開して各ヒロインのキャラ描写に費やすターンは令和の高速環境には存在しません。

 ならばどうすればいいか?まず、デッキビルダー達は採用するヒロインを絞り始めました。

 ヒロインを横並べ展開するために使うターンはありません。初動で展開した強力な1人のヒロインをサポートして一気に削りきる。これが令和ラブコメの標準となりました。

 

 単ヒロインアグロの誕生です。


 では、単ヒロインアグロに採用すべきヒロインはどのようなヒロインでしょうか?

 あらゆる単ヒロインが群雄割拠していた令和初期環境は、あるカードが登場したことにより一色に塗り替えられます。


 《むちむち》の登場です。


 《エッチな》テーマならあらゆるヒロインで採用できる《むちむち》は瞬く間に環境を席巻します。

 当然でしょう。いくら単ヒロインアグロとはいえ序盤で十分に描写を深めることは難しい。

 しかし、手札に《むちむち》と《巨乳》の二枚があればそれだけで盤面を制圧することができます。


 ヒロインレースの横展開すら必要なく圧倒的な《むちむち》で全てを蹂躙する単ヒロインアグロが、瞬く間に有象無象のハーレムヒロイン達を蹂躙していきました。その象徴と言えるのが昨年の世界大会でしょう。

 単ヒロインアグロの台頭は認識されていたものの未だデッキリストは固まっておらず、結果的に使用率1位はでした。しかし蓋を開けてみれば結果は一目瞭然でした。


 1位 《謎部活》《先輩》アグロ(《粘着質》採用型)

 2位 《男装》コンボ

 3位 ネトリディスク

 4位 《謎部活》《先輩》アグロ

 5位 《オタクヒロイン》アグロ

 6位 《クリエイター》アグロ

 7位 《機械音痴な優等生にリモート授業の受け方を教えてたら急接近》アグロ

 8位 ヒロインバベル


 複数入賞しているのは《謎部活》《先輩》高速コンボのみ、一見多様なデッキの存在する群雄割拠の環境に見えるでしょう。

 しかし、リストを見れば3位のネトリディスクと8位のヒロインバベル以外は全て単ヒロイン。そして全てのデッキに《むちむち》がフル採用。まさに、圧倒的な《むちむち》環境でした。


 それも当然でしょう。《部員が1人の謎部活》で他のヒロイン展開を妨害し《やたら距離が近い》《エッチな先輩》《むちむち》で一気に攻める《謎部活》アグロ。(余談ですが、筆者は優勝デッキの《粘着質》《執着心》を採用してよりロック能力を高め同型に強くでる優勝リストを見て筆者は本当に感動しました)


《男装》《ギャップ》と《むちむち》のシナジーに注目した最も強く《むちむち》を使える《男装》コンボ。


《NTR》で奪ったヒロインを《むちむち》にして《寝盗りDVD》で一気に感情を破壊するネトリディスク(年齢制限リミテッドでしか使えないカードだと思っていた《NTR》を全年齢スタンダードで採用したデッキが出てくるとは驚いたものです)


 《むちむち》な《オタク友達》が《コスプレ》で攻めてくる《オタクヒロイン》アグロ。

 《むちむち》な《作家ヒロイン》が《これは取材》で攻めてくる《クリエイター》アグロ。

 コロナ禍環境を逆利用して《機械音痴な優等生》に《リモート授業の受け方を解説》で急接近するデッキでももちろん《むちむち》。

 そしてヒロインバベルですら《むちむち》


 ありとあらゆるデッキに採用され序盤の安定感からフィニッシュにまで貢献する《むちむち》はまさに令和のラブコメ環境を象徴するカードです。

 ここまで暴れるとさすがに禁止されると予想した方も多かったでしょう。しかし、世界大会後の禁止改訂で出された声明では。


「長らくによってゆがめられてきた環境は我々にとって頭痛の種でした。しかし、それは解消されたといっていいでしょう。

 ハイレベルなメタゲームにおいて《むちむち》《巨乳》が高い使用率を誇る要注意カードであることは我々も認識しています。

 しかしながら《むちむち》によって環境にはこれまで見られなかったエキサイティングで多様なヒロインが存在していること、かつて環境を支配したハーレムグッドスタッフも未だに健在であることから、環境の健全性は保たれ好ましい状態であると判断されました。


 よって新たな禁止改訂はされません。


 しかし、環境は危ういバランスの上で成り立っています。

 環境の健全性が保たれるよう、次回の禁止制限告知まで我々は《むちむち》《巨乳》を注視していきます」(以上、公式サイト禁止改訂コラムより引用) 


 まさかの《むちむち》無制限でした。今この判断の是非は問いません。商業的な観点やシングルカード市場への影響を考えると容易に禁止カードを出すことは望ましくありませんしね。

 ともあれ、競技ラブコメプレイヤーとしては容易された環境で戦うだけです。《むちむち》を使うか、倒す側にな回るか……いずれにせよ、環境は《むちむち》の【単ヒロインアグロ】で回っていることは間違いありません。

 はたして次の大規模大会も会場は《むちむち》で満たされてしまうのか、それとも《むちむち》を倒す新たなデッキが登場するのか。みなさん、是非予想してみてはいかがでしょう。

 それでは、また次の記事で。

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