たそかれ

@yujiyok

第1話

「黒田ってさ、犬5匹飼ってるって知ってる?」

「5匹ってすごいね、何犬だろう」

「家でかくなきゃ無理だね、お金かかりそうだし。金持ちなのかなぁ」

「なんか屋敷とかに住んでたりして」

「そういえば黒田って、いつもひとりで帰るよね。家どこだっけ?」

「学校に来る時も誰かと一緒ってことないよな。友達いないのかな」

「さすがに来る時はひとりで良くない?鈴木って同じ中学じゃなかったっけ、家とか知らない?」

「いや、俺中学は一緒じゃないよ。黒田どこ中だっけ?」

「どこだっけ、忘れた。あ、女子なら知ってんじゃね?木村~、黒田と席隣じゃん、黒田のこと何か知ってる?」

「何?知らないよ何も。だいたい黒田くんて私の隣じゃないし」

「あれ?違ったっけ。隣は山本だったっけ?」

「私じゃないよ。私の隣は鈴木くんと岡本くんじゃん」

「そうか。あれ?黒田の席ってどこだっけ」

「後ろの方じゃなかった?一番後ろの一番隅?」

「窓側は俺だし。廊下側?」

「それは私。て言うか本人に聞けばいいじゃん。どっか行ってんの?今日休み?」

「見てないよな。でも朝全員いたはず」

「黒田くん…て」

「何?木村」

「ね、近藤くんの出席番号、私の次だよね」

「そうだよ。何で急に」

「木村の次が近藤」

「黒田が入るとしたら、その間だ」

「あれ?黒田ってこのクラスじゃなかった?」

「うそ、違うクラス?何でみんなこのクラスって思ってたの?」

「黒田ってどんな奴だったっけ」

「…背が高くて、細くて…」

「髪はこのくらいの…」

「おかっぱっぽい」

「そうそう。で、…低い声だったような」

「で、気付いたらその辺にいて話に交じってて…」

「犬を5匹飼ってる」

「それ、誰から聞いたの?」

「誰だっけー、あれ?昨日本人から…あれ?夢かなぁ」

「夢?」

「だってこのクラスに黒田はいない」

「でもみんな黒田くんのこと知ってる」

「どういうこと?」

「そもそもこの学校に黒田っているの?」

「別のクラスでしょ」

「学年の名簿ってあったっけ?」

「黒田くんの下の名前って何だっけ?」

「何だったかなぁ…」

「ねぇ、黒田くんて誰?」

「誰だっけ、黒田って」

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