深紅のランドセルをきっかけに、母と娘、そして“もうひとりの少女”の想いが重なっていく物語です。
娘・メイの小学校入学を前に、母の百合子が選ぼうとするランドセル。
そのごく普通の出来事に、小さな不思議と、胸に残るあたたかさがそっと混ざっていきます。
さらに本作は、同じ物語を 四つのスタイル(純文学・詩・ラノベ・朗読台本) で描き分けているのが特徴。
語り方が変わるだけで情景の見え方が驚くほど変わり、ひとつの物語の“多面的な美しさ”を味わえる構成になっています。
深紅のランドセル、やまももの香り、春の光。
どの章を読んでも、すっと目の前に景色が広がるような感覚があり、読み終えたあともしばらく心に残ります。
優しさと切なさが入り混じるヒューマンドラマを求めている方、今日は描写の違いを味わいながら読んでみるのはいかがでしょうか。
様々な筆致で描かれる、ランドセルに詰め込まれた想いを巡る物語。
主な視点は母親のものだ。今度小学校一年生になる娘のためにランドセルを探していた。しかし、清貧生活を送ってきた母子に、今どきのランドセルは高価な物だった。
しかし、ネットでランドセルを探していた時のこと、母はたった一つのランドセルを譲り受けることに成功する。
娘は何とかランドセルを背負って、小学校に登校するようになり、通学路では友達もできたらしい。しかしその友達には秘密があるようで……。
果たして、そのランドセルに詰め込まれていたモノとは?
そして娘にできた友達の正体とは?
同じストーリーが描かれているようで、細部は異なっている作品です。小生が一番好きだったのは純文学風の一話でした。皆さまも、自分のお気に入りのストーリーがきっと見つかります。
是非、御一読ください。
ピカピカのランドセルを初めて背負う、優しい風が香る春の季節。
ひとりひとりの優しさが織りなす物語は切なくも美しく、静かに胸を打ちます。
そして今作は、一つの物語をそれぞれ4つの作風で描く短編集です。その4つのどれもが美しい言葉で彩られ、そのどれもが違う響き方や余韻を残します。
前衛的な作品でありながら、そこには実験的な意味合いや気負いなどはなく、ただただ言葉に誠実な作者様の物語への慈しみが感じられます。
第1章は「言葉」の美しさそのもので読ませ、第2章は詩の「リズム」で哀愁を描き、第3章は言葉の存在感を一歩下げて「物語」そのものを届ける。第4章は聞こえてくる声や音に耳を澄ませ、言葉や物語の「余韻」が心地よく残ります。
読後は物語に感動するのみならず、文章で物語を表現することの意味やその響き方の違いに、言葉の面白さを再認識する次第です。
皆様も是非、この物語の美しさと優しさに触れてみてはいかがでしょうか。