第27話 選手紹介パート2


『今のは皆さんも驚かれたと思います。何を隠そうワタクシですら、驚きを隠せません。なんとあの全中2年連続MVPの夏陽ハルが、シューティングガードではないのですから‼』


 放送部の言葉に騒然となる体育館。

 見学に来ていた中等部の男女部員も目を丸くしていた。

 それを見て、俺はさらに笑みを深める。


「計ったな、夏陽」

「勝手に決めつけたのはそっちだろ? それとも俺とあの男をぶつけたかったのか?」


 俺は涼しい顔で焦るゴリラをみつめる。

 コート上ではさっきの男が、ウチの3年生を睨みつけていた。


「お前が俺のマッチアップ相手? 聞いてたやつと違うじゃないか」

「なんで俺がこんな貧乏クジを引かないといけないんだよ」


 睨まれて涙目の風辻先輩。一応、今のチームの正シューティングガードだ。

 と言っても俺の所為で一時的に、スモールフォワードからコンバートしてるけど。


『驚きばかりが溢れるシューティングガードの紹介でしたが、残すは4人の紹介のみ。では満を持して紹介させてもらいましょう。1年生ながら、その実力を買われていきなりキャプテンに任命された男、大巨人――盾島海斗‼』

「…………」


 全員の視線が巨人に集まる中、当の本人は何故かキョロキョロとしていた。

 たぶん今、体育館にいる全員の視線が巨人に向けられているはずだ。

 そして遂に腕を組んだ巨人が口を開く。


「俺か? 何を言えばいいんだ?」


 どう見ても相変わらずの通常営業。

 本当にこの男、どこまで天然なんだ。

 永玲のシューティングガードと良い勝負だぞ。


『はい。ではいつも通りの盾島キャプテンが見れたところで、次は永玲側の紹介です』


 そんなの聞くまでもない。残すは冷ともう一人の170センチ。

 パワーフォワードは間違いなく冷だ。

 だとするともう一人が――


『これは一体なんの策でしょうか‼ 永玲、メンバー表を間違えたとしか思えません‼』


 急に不穏な物言いを始める解説役の放送部。

 その発言に周りの視線が、永玲で最も大きな冷へ注がれていた。

 誇張したところで名前を呼ばれるのは、あの大きな金髪頭。

 全員の頭の中で、自動的にそう整理されていたからに他ならない。

 でも放送部が告げたのは――


『永玲のパワーフォワードは1年生‼ 矛山陸ほこやまりくです‼』


 冷とは別の名前だった。

 しかも呼ばれた茶髪の男は――


「久しぶりだな、盾島」

「陸が俺の相手か。姉の方は元気か?」

「黙れ。お前に教える義理はない」


 なぜか、巨人と一触即発の険悪ムード。

 もしかして知り合いか何かか?

 巨人にしては珍しく顔を覚えてるし。

 でもこれで俺と冷以外の全員が紹介された。

 残すは俺と冷の残りの中学生二人。


『ここまで波乱万丈でお届けしました、メンバー紹介。それも遂に残すは二名のみとなりました。それも二人揃って特殊なポジションを背負った男たち。なんとその両方が司選手と同じく、中学三年生でございます。ではまず永玲側から紹介を行いましょう』


 その発言の直後、今度こそ全員の視線が冷を捉える。

 この会場で最も目立つ髪色。最も目立つ巨大な体。

 その場にいるだけで、確かに強烈な存在感を放っていた。


『なんと‼ 永玲五人目のスタメン選手、小木冷選手‼ 彼のポジションはスモールフォワードでも、パワーフォワ―ドでもない。永玲独自のポジション、BF――ビッグフォワードだ‼』


 放送部員の声を聞いて、俺は思わず笑ってしまった。


「君にはおかしく聞こえたかな? でもこれは僕に適したポジションだと思うよ」

「そうだな。確かにお前にしかできないポジションだ。でもな。そういうポジションならウチもちゃんと用意してあるんだよ」


 笑った俺に噛みつこうとしたのか、冷が冷ややかな視線を向けてきた。

 だけど別におかしくて笑ったわけじゃない。

 ただ似てると思ったんだ。

 冷のビッグフォワードという名前を考えたやつと――


『そしてなんとこちらも驚き‼ 今年も全中MVPを獲得した夏陽ハル選手‼ 彼がシューティングガードというポジションを投げ捨てて得たのは‼ こちらも海桜独自のポジション、RF……これは一体なんの略でしょうか?』


 さっきまで興奮していた解説役。

 さらに体育館の熱気まで一気に覚めるのを感じた。

 あれ? フユに言われたままのポジションを書いたはずなんだけど。


「ハル。アンタ、メンバー表になんて書いたわけ?」


 おかしな空気になった会場で、フユがコート上まで来て俺に声を掛けてきた。

 それも皆には聞こえないように、少しだけ体を屈ませて俺の耳元で。


「いや、お前に言われた通り頭文字のRとFを一文字ずつ――」

「アンタって本当にバカね‼ リトルの頭文字はRじゃなくてLよ‼」

「え? え? え⁉」


 耳元で大声で叫ばれたのも衝撃的だったけど、違う意味でも衝撃的だった。

 だってリトルって言うじゃん。絶対にあれ、発音Rじゃん。


『ど、どうやら。メンバー表に記入した夏陽選手が英単語を間違えていたらしいです。それもバスケット選手以前に、中学3年生として恥ずかしいリトルのつづり間違い‼ これは高等部への進学が危うくなるレベルでの間違いだ‼ 彼は本当に中学3年生なのでしょうか‼』


 体育館の空気がまた変わった。

 今度は全員が大笑いしている。

 放送部のやつら、あとで覚えてろよ。

 俺も後で冷に加勢して放送部員を吊るし上げてやる。


『ですがこれで夏陽選手のポジションが判明致しました。なんと彼のポジションはリトルフォワード‼ 小木選手とはまさに正反対‼ 相対するポジションです‼ 両選手、風変りなポジションで一体、どのようなプレーを見せてくれるのでしょうか‼ 間もなく試合開始です‼』

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