第1話 もう1人の私の召喚
私は、話を聞いてくれる人を求めていた。 きっとその人は私の心を分かってくれる人だと思う。そんなことはあり得ないと思っていた。 もちろん完全に私の心を理解してくれる人がいるとは思わない。 そんな人がいたら、相当びっくりする。 でも、少しでも分かってくれる人がいたらいい。 そんな人と会ったことがないから。
そんな時に、この魔道書と出会った。色々なことを召喚出来るなんて、夢のような話ではないか。
試しに召喚してみよう。せっかくだからもう1人の私を召喚してみる。すると、自分と同じ人が目の前に現われる。
『こんにちは、私はもう1人のあなた。』
本当に召喚できるとは思わなかった。 誰がそばにいるだけで心が満たされていくのが分かる。
ハッと我に返る。それだけて満足してはいけない。 せっかく来てくれたなら、たくさん話をしないと。
「あなたが、もう1人の私…?」
『そうよ。でもきっと性格も色々ちがうかもしれないけどね。』
「そうなんだ。でも、それでも嬉しい。 1人でいても寂しくてでも他の人には話せなくて。 こんな気持ちをどう伝えたらいいのか分からなくて。」
『別に伝える必要なんてないんじゃない? あなた、この寂しい気持ちを共有したいという気はないじゃない。 むしろ、どちらかというと、今の時間を楽しみたいという気持ちが強いのね。』
「そうそう。 そんなことを伝えるなら、 その人とどうにかして楽しい時間をたくさん過したいから、 そんなことは考えない。」
ずっと不安だった。 よく分からないけど不安だった。 何もできていない自分が嫌だったのだろうか。
でも今、やりたいことを成しとげたからだろうか。 不安がどこかへ行ってしまった。 むしろ、やりたいことがたくさんあって、それに夢中になっている。
私の本当にやりたいことに挑戦出来て、とても心が澄んでいる。 でも、一つ心残りがあった。
「私って、友達がいるのか分からない。 最近なんか連絡すらとってない。 そんな状態だから、なんとなく寂しくなる。」
もう1人の私がうーんと考えた後、言った。
『でも、最近満足しているような気がするけど。 1人の時にしっかりふとんで昼寝したり、 テレビで本気で面白いと思えるものに出会ったりしているし。 1回友達と会って楽しくなかったって言ってたじゃない。 だからきっと無理して会うより家で何か夢中になれるものを見つけた方がいいんじゃない。』
「何か集中するものね… そんな些細なことでいいんだね、きっと。」
『そういうものよ。何も人と一緒にいるということが全てではない。 自分が満足して生活することが大切なんじゃない?』
「そうね、結局そうなるよね。 何だかんだで1人の方が 心を落ちつかせるんだよね。 ありがとう。また来てね。」
『もちろん。呼ばれたらまた来るわよ。いつでも。』
そして、消え去った。
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