欲望よ

この望みを叶えても


欲しいものを全て手に入れようとも


次の退屈と孤独を


ここに寄越すのだろう


瞬く間に渇いてゆく心


その内側で


おまえは艶々と膨れ上がり


また別の何かを僕に望ませる


そんなふうにして


誰の中にも容易く棲みつき居座って


心を惑わせる 脳を狂わせる


誰も皆言うんだ


おまえをどんなに抱きしめても


決して満たされはしない


虚しくなるだけだ、と


そんなこと知ったこっちゃないと


おまえはまるで


暇潰しのおもちゃでも愛でるかのように


気まぐれに僕らの中に湧き上がり


ひとときの幸福や快楽へと


この身を向かわせる


わかっているんだ


おまえは僕を愛していない


わかっているんだ


僕らを愛してなどくれない


それでもおまえと共に生きるほか道はない


おまえを殺すことなどできはしないのだ


生きることの全てはおまえと共にあり


おまえを殺すことは僕を殺すこと


そうなんだろう欲望 なあ欲望よ


一体おまえはどんな姿をしていて


どんな顔で どんな瞳で


哀れな僕らを弄んでいるの

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